★★★☆☆
あらすじ
次々と襲い掛かるテロリストたちから政府要人を身を挺して守るSP班。
テレビ放送された連続ドラマの続編。98分。
感想
テレビドラマを全然見ていない状態で見たら、まったく話が分からなかった。「エピソード5」と銘打っているくらいなので、エピソード1~4を見ずにこれを見るほうが悪いのだろう。ドラマ版を楽しんだ人のための映画と言える。新規の客は歓迎していないようだ。
ドラマを見ていない人にとってのこの映画の見どころは警護シーンだけだ。これ自体はかなり本格的で見ごたえのあるものになっているが、本格的なアクションをやりたいばっかりにリアリティが失われてしまっているような気がした。序盤のSPである主人公とテロリストの対決は、自由に動き回り過ぎだし、時間がかかり過ぎだった。そんな時間があるならさっさと大勢で取り押さえていなければ駄目だろう。
終盤は官房長官がテロリストに次々と襲撃される。官房長官は重要度のかなり高い人物のはずだが、おそらく1,2時間は続いたこの事態にパトカー1台、警察官1人すら駆けつけなかったのはある意味ですごい。これも主人公たちの迫真のアクションを見せたかったためだろうとは思うが、そんなことよりもこの国の警備体制に不安になってしまった。
それから覆面をしていたテロリストたちをSPが取り押さえた後、その覆面を外そうとしなかったのも不自然で気持ち悪かった。普通は襲ってきた奴がどんな人間なのかと、顔を見たくなりそうなものだ。官房長官が大してビビっていないのも気になったが、これは逆にリアルなのかもしれない。日本の政治家は鈍感で想像力がない人間が多いような気がする。その方が出世するようでもある。
この襲撃は、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを受けて開かれる緊急会議に官房長官が向かう過程で起きた事件だが、この時はまだ政府がちゃんとやるべきことをやっていたのだなとしみじみとしてしまった。今や同様の事態で緊急会議なんか開かないし、自分のゴルフを優先してしまう人すらいた。そして政府に委縮して日和っているくせに、その自覚すらないくらい落ちぶれてしまったマスコミも、この時はまだ政府に恐れられている。この15年ほどでずいぶんと世の中が変わってしまったのだなと遠い目をしてしまった。貧すれば鈍すということか。
単純に要人を必死に守る物語であればそれなりに楽しめのたかもしれないが、その裏に何らかの陰謀があるらしい事は窺えるのでそれが気になって集中できない。しかもそれはドラマ版で既に描かれているだろうことなので、この先どんなに一生懸命に見たところで分かることはないのだと思うと、ずっと気持ちは冷めたままだった。
ドラマ版を見てからでないと次作の「野望編」を見てもしょうがないと分かったことだけが収穫だ。それが分かるための時間が100分未満だったのはありがたかった。
スタッフ/キャスト
監督 波多野貴文
脚本 金城一紀
出演 岡田准一
真木よう子/松尾諭/神尾佑/山本圭/野間口徹/堀部圭亮/平岳大/波岡一喜/螢雪次朗/でんでん/山本圭/遠藤要/菅原大吉/ダイヤモンドユカイ/綾野剛
音楽 菅野祐悟
SP THE MOTION PICTURE - Wikipedia
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