BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「メアリーの総て」 2017

メアリーの総て(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 書くことに喜びを見出していた少女は、恋に落ち、駆け落ちをしてしまう。「フランケンシュタイン」の著者メアリー・シェリーの半生を描いた映画。

www.youtube.com

 

 原作は「Mary Shelley」。

 

感想

 「フランケンシュタイン」の著者であるメアリー・シェリーの半生が描かれる。このゴシック小説の著者が女性であることを知った時には驚いたものだが、その両親がアナキズムの先駆者とフェミニズムの創始者だったとは知らなかった。

 

 進歩的な両親のおかげで主人公の家族関係がいまいち分かりづらかったが、父親は主人公の母親が亡くなった後に子連れの女性と結婚したということのようだ。

 

 主人公はやがて詩人の男と恋に落ちる。だがこの男は妻子がいることを隠していたり、自由恋愛を標榜していたりと危うさしか感じなかった。それでも主人公はそれを受け入れ、父親に認められないと分かるとさっさと駆け落ちしてしまう。さすが先進的な両親を持つ女ならではだ。この駆け落ちに義理の妹が付いてきてしまうのは解せなかったが、これは史実なのだからしょうがない。

 

 

 そして波乱万丈の三人の不思議な生活が始まる。贅沢と貧乏、幸せと不幸をくり返す浮き沈みの激しい不安定な生活だ。そんな中で印象的だったのは、主人公が恋人に君も別に恋人を作れと言われてショックを受けてしまうシーンだ。彼らはなにものにも束縛されずに生きることを理想としており、だからこそ主人公は既婚者の男と暮らしているのにも関わらず、その流儀で望まぬことが起きてしまうと途端に拒絶反応を示してしまっている。

 

 アナキストの父親が主人公の不倫を認めなかったのも同様だが、こういう矛盾こそがリベラルの欺瞞として攻撃されやすいところなのだろう。理想を掲げていても、それが負の方向で我が身に降りかかると急に従来の保守的な反応を示してしまう。結局都合よく思想を利用していただけと思われかねない。

 

 だがそれを認めて乗り越え、さらに前に進んでいけるかどうかで真のリベラルかどうかが分かる。その点、主人公の父親のその後の態度は立派だった。気に食わない態度を取った娘に対しても、一人の人間としてちゃんと敬意を払っている。

 

 全体的には散漫な印象を受ける物語で、それぞれのシーン自体は面白いのだが、それが全体にどうつながっているのかが見えない。もしかしたら、小説「フランケンシュタイン」のあの場面はこのエピソードから着想を得たのだと分かるようになっているのかもしれないが、残念ながら未読なので不明だ。それにもしそうだったとしたら、観客を信用しすぎてしまっているような気もする。

 

 ダメ男で主人公を外に連れ出したらすぐにいなくなってしまうのだろうと思っていた恋人が、ギリギリではあったがかろうじて関係を保ち、最後まで一緒だったのは意外だった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ハイファ・アル=マンスール

 

出演 エル・ファニング/メイジー・ウィリアムズ/ダグラス・ブース/ベル・パウリー/ベン・ハーディ/トム・スターリッジ/スティーヴン・ディレイン

 

音楽    アメリア・ワーナー

 

メアリーの総て(字幕版)

メアリーの総て(字幕版)

  • エル・ファニング
Amazon

メアリーの総て - Wikipedia

 

 

登場する作品

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

「吸血鬼(The Vampyre; A Tale: The Original 19th Century Gothic Horror Classic (Annotated))」

 

 

登場する人物

メアリー・シェリー/パーシー・ビッシュ・シェリー/ジョージ・ゴードン・バイロン/ウィリアム・ゴドウィン/ジョン・ポリドリ

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com