★★★☆☆
あらすじ
失意の男は日本の富士の樹海に向かうが、そこで一人のさまよう日本人と出会い、行動を共にすることになる。
感想
キーを付けたままで車を降り、手ぶらで日本行きの飛行機に乗り込む茫然自失の表情の主人公を見れば、彼が尋常ではない状態であることがすぐに分かる。日本到着後はそのまま富士の樹海に向かう。
富士の樹海と言えば自殺の名所で、主人公もそうなのだろうな、とは思うのだが、そこまで死を決意した悲壮感は漂ってこない。どちらかというと生きる気力が無いだけで、何となくこの地に来てしまったように見える。あとで登場する渡辺謙演じる男と同じで死にたいのではなく、生きていたくないという状態。だから、目の前に困った男がいれば助けようとしてしまったのだろう。
ハリウッド映画で舞台は日本、ということで、マシュー・マコノヒー演じる男が英語で話しかければ、当然のように英語で応える映画の中の日本人たち。日本人的には皆が普通に英語をしゃべることに違和感しかないが、その辺りにリアリティーを求めていたら話がややこしくなるから暗黙の了解でお願いします、ということなのだろう。フランスやアフリカが舞台で、現地の登場人物たちが英語で話していても、日本人は気にしないのと同じ。
主人公は樹海で出会った日本人と行動を共にすることになる。出口を求めてさまよい続けるシーンの合間に、回想シーンが挿入され、次第に主人公がこの地にやってきた理由が明らかにされていく。断片的に描くことで、最初は離婚かと思わせて、次は妻の病死と思わせ、それも違って…という風に、死のうと思った原因をはぐらかしながら展開する仕組みとなっている。面白いとは思うのだが、どれだって悲しいわ!と言いたくなる気持ちがないでもない。
主人公は悔恨の気持ちを語り、同行の日本人が死に対する日本人の考え方を教え、少しずつ主人公の心の傷が癒えていく。主人公が樹海を抜け出した終盤からラストまでの流れは悪くはないのだが、そこに至るまでの過程、そもそも主人公がもう生きてられないと思ったほどの何かが見えてこないので、今ひとつ感情移入できない自分がいた。
スタッフ/キャスト
監督 ガス・ヴァン・サント
脚本/製作 クリス・スパーリング
製作 ギル・ネッター/ケン・カオ/F・ゲイリー・グレイ/ケヴィン・ハロラン/ブライアン・ドビンズ
出演 マシュー・マコノヒー
ナオミ・ワッツ/ジェームズ・サイトウ/オーウェン・バーク/玄理