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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「荒野の渡世人」 1968

荒野の渡世人

★★★☆☆

 

あらすじ

 舞台はアメリカの西部劇の時代。元侍の日本人の父親とアメリカ人の母親を殺された男は、復讐のために犯人を追う。

 

感想

 開拓時代のアメリカに生まれ育った侍の子が、両親を殺した男たちへの復讐を誓う。冒頭は、主人公と父親の会話は日本語、それ以外は英語というチャンポン状態だったが、父親が殺されたタイトルバック以後は日本語吹き替えで進行する。そのシステムに切り替わった瞬間は若干戸惑いを覚えたが、すぐに慣れる。しかし、ならず者たちに一家が襲われ、両親が殺されたシーンで、主人公だけがまったく無傷だったというのはさすがに無理があるように感じた。

 

 高倉健演じる主人公は、途中で知り合った腕利きのガンマンの手ほどきを受けながら、ひとりずつ復讐を果たしていく。ただ、毎回そんなに盛り上げずに倒してしまうので、あまりカタルシスは得られない。大波になる前に決着をつけるので、さざ波が続いてしまう感じだ。しかも中盤までにおおよその敵は倒してしまい、後半はどうするのだ?と勝手に不安を感じてしまった。

 

 

 そしてその後半で描かれるのは、復讐の空しさ。自身の行為により、復讐の連鎖が続く事を実感した主人公は、身を投げ出してそれを断ち切ろうとする。「出ていかないでくれ」と言ったり、「出ていってくれ」と言ったり、いったいどっちなのだ?と言いたくなるようなヒロインの揺れる心も描かれて、段々と日本映画らしいウェットさが出てきた。そしてクライマックスは、じっと耐えていた主人公が限界を迎え、決死の覚悟で戦いに向かう展開で、まさに任侠映画だ。このクライマックスは、今まで封印していた日本刀を上手く使っており、なかなか決まっていて気持ちが良い。このあたりは悪くなかった。

 

 侍が西部劇の世界へというサムライ・ウェスタンは、かなりベタではあるのだが、高倉健が西部劇の映像の中で浮かずにしっかりと馴染み、全く違和感がないことに感心した。さすがスターだ。マカロニ・ウェスタンは、イタリア人にはこんな風に見えているのかもしれない。当時のアメリカ人がこの映画を観たら、案外気に入ってくれたような気がする。アメリカで公開して評価を聞いて欲しかった。

 

スタッフ/キャスト

監督

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脚本    石松愛弘

 

出演

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志村喬

 

音楽    八木正生

 

荒野の渡世人 - Wikipedia

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