★★★★☆
あらすじ
死んだ妻との思い出を振り返る写真家の男。
感想
夫婦の想い出が綴られる映画だ。つかみどころのない部分がある妻と、それに翻弄されて時に苛立ち、時に戸惑う主人公の様子が描かれている。
そんな二人の関係は、他人から見れば面倒くさいなと思ってしまわなくもないのだが、主人公にとっては分かり合えないミステリアスな部分があることが重要だったのだろう。おそらく主人公は何でも分かり合える同志のような関係は求めていなくて、女神のように崇めることが出来る対象を欲していた。芸術家らしい感覚と言えるかもしれない。
死んだ妻との思い出を振り返る構成なので、既にそれは想い出補正で美化されることは運命づけられているわけだが、それでも美しい中山美穂と渋い竹中直人が演じるカップルは映像に力があり、ずっと見ていられる。特に柳川での旅行の様子は良かった。
セピアな色調の映像や衣装なども効果的に作用しており、映画として総合的によくまとまっている。時おりみられたロングショットが妙に印象的だったりと、映像として決まっているシーンも多かった。監督にモデルとなったアラーキーが憑依していたのか?と思ってしまうほどだ。
若干、感傷的過ぎるきらいはあるが、それでも愛した人が今はもういない痛みがひしひしと伝わって来る。切なさが波紋のように広がっていく。
スタッフ/キャスト
監督/出演 竹中直人
脚本 岩松了
原作 東京日和 (ポプラ文庫)
出演 中山美穂/田口トモロヲ/温水洋一/利重剛/鈴木砂羽/山口美也子/塚本晋也/中田秀夫/周防正行/久我美子/津田寛治/中島みゆき/しりあがり寿/藤村志保/荒木経惟
音楽 大貫妙子
撮影 佐々木原保志
この作品が登場する作品