★★★★☆
内容
各界を代表する人物たちとビートたけしの対談。
感想
2001年当時の政界、スポーツ界、映画界など各界の大物とビートたけしが対談する。おそらくは本人が興味のあるジャンルの人たちだからという事もあるのだろうが、普通に大物たちと対等に話し、興味深い対談になっているのがすごい。相手をおだてて終わりではなく、ちゃんと自分の意見や笑い話を織り交ぜながら話を進めている。今、他ジャンルの大物を相手にこんなことが出来る芸人はいないような気がする。太鼓持ちのようになるか、何だか偉そうと叩かれるかのどちらかだろう。
それから対談後に、対談相手に対する寸評のようなものも記されているのだが、それがなかなか鋭く、あんなに和やかに話していたのに目茶苦茶冷静に相手のことを観察していたのだなと恐ろしくも感じた。特にタカ派で知られる石原慎太郎に対する評価は的を射ているようで、なるほどなと感心した。
どの対談も面白かったがその中では、小沢一郎との対談がとても印象に残った。当時の良くない政治状況について語り、憲法改正や選挙改革についてのたけしの過激な提言に対して、様々な意見を述べている。この時から20年後の今だと、ここで挙げられていた過激な提言はいくつか実現してしまっているような気がするのだが、それについて彼らは今どう思っているのかは興味がある。一回痛い目にあわさないと日本人の駄目さ加減は治らないと思ってあんなことを言ったのだが甘かった、駄目さ加減は想像以上だった、とか言いそうだ。今ならこれを踏まえた上でまた別の面白い提言が出てきそうなので、それを聞いてみたい。
いくつかの対談の中で異色で面白かったのは、実娘である北野井子との対談だ。親子なのだから当たり前なのだが、若い女性にタメ口で話しかけられている様子はなんだか新鮮だった。そして、大好きなお父さんに娘が一生懸命必死に話しかけているといった感じで微笑ましい。ただ、普通の父娘では話さないような話題もあったりして、何を話しても大丈夫だという父親に対する娘の信頼と尊敬を感じた。
それからもう一つ異色だったのは、ラストの淀川長治との対談だ。淀川長治が喋りまくって、たけしに話す隙を与えない。しかもベタ褒めするものだから、たけしも「はあ(笑)」「どうも(笑)」「(笑)」と返すのが精いっぱいで圧倒されている。でも淀川長治はとにかく映画を褒める人だという印象が強かったので、たけし映画を褒めつつ他の監督の作品を辛辣にけなしているのが面白かった。
そして淀川長治は本当に映画を愛しているのだなと分かる。もはや対談ではなく、大好きな監督・北野武に対する取材、インタビューの場となっていた。しかしやっぱり本当のプロというものは、次から次と質問が出てくるものだ。この対談の淀川長治の取材?ぶりを読んでいると、すぐに「あなたにとって映画とは?」「一言で言うと?」とかしょうもないことを聞いちゃうジャーナリストの幼稚さ、浅はかさがよく分かる。
著者
ビートたけし
登場する作品
「NO(ノー)」と言える日本―新日米関係の方策(カード) (カッパ・ホームス)
ツービートのわッ毒ガスだ―ただ今、バカウケの本 (ワニの本)
*「友情」bookcites.hatenadiary.com
あの頃映画 松竹DVDコレクション 二等兵物語 女と兵隊・蚤と兵隊