★★★☆☆
あらすじ
長い友人時代を経て結婚、そして子供が生まれるも、すぐに妻が癌で死んでしまった夫婦が、二人で過ごした時間を振り返る。事実を基にした映画。
感想
癌になった妻を看取る闘病ものの映画だ。しかし結婚から妻が死ぬまではわずか二年ほどで、その間に闘病だけでなく子供も生まれているので、劇中でも言及しているがなかなか慌ただしい。でも本当に起きたことなのだから仕方がない。当人たちは大変だっただろう。
おそらく世界中で山ほど作られている闘病ものだが、この映画は死んだはずの妻がなぜか現れ、短かった結婚生活を夫と共に振り返るスタイルなのが特色だろうか。二人で回想し、過去の自分たちにツッコミを入れたりしながら見守っていく。闘病ものだがコミカルに描こうと笑いを散りばめているのだが、そこはあまりうまくいっていなかった印象だ。主演二人の上手い演技のおかげでスベってはいないが、笑えるほどではない。観客それぞれの受け止め方次第ではあるが、それでもやはり深刻な事態なので軽々しく笑えなくなる。
それにどうせ互いにツッコミを入れながら振り返るのだったら、短い結婚生活の原因になってしまった、20年近い長すぎる友人時代だろうと思わなくもない。この時行くべきだったわーとか、来てほしかったわーとか言いながら。趣旨がブレてしまうのは分かるが、これならユルく笑いながら見られるような気がする。
死んだはずの妻が出てくる現象は、いろいろとそれらしい理由を挙げてはいるものの、結局なぜ出てくるのかはよく分からない。そこはどちらにしても合理的な説明など出来ないのだから曖昧でも構わないのだが、どういう時に出てくるのかなどの設定はきちんと説明しておいて欲しかった。それがないものだから、彼女が現れても現れなくなっても、どちらにしてもイラっとしてしまうところがあった。
それでも闘病生活を送る当時の自分たちの様子を、「俺たちよくやってたよな」とでも言うように、二人そろって優しい目でしみじみと見つめる姿は良かった。でも過去を振り返る二人がおじいちゃんおばあちゃんではなく、そのわずか2年後の姿でしかないことを思うと、本当はもっと長い時間を一緒に過ごしたかっただろうにと悲しくなる。死に場所と決めた故郷に帰るために東京を離れる妻が、夫婦で暮らしたマンションを噛みしめるように、しばらくじっと見上げる姿も泣けた。彼女はもう2度とこの場所に戻ることがないことを理解している。
最初は笑いを散りばめつつ、最後は結局泣かせる展開だ。悪くないプロットだったが、最後は色々とごまかして、なんとなくまとめられてしまったような気がした。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 前田弘二
出演 佐々木蔵之介/永作博美/佐藤仁美/杉本哲太
音楽 きだしゅんすけ