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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「「男らしさ」はつらいよ」 2017

「男らしさ」はつらいよ

★★★★☆

 

内容

 英国でコメディアンとして活躍する著者の半生記。

 

感想

 英国で人気のコメディアンが半生を語る伝記。早くからコメディアンになることを夢見て、まずは優秀な人間が集う一流大学を目指し、そこで出会った仲間とともにプロとして活躍するようになっていくまでが語られる。彼が幼少期に夢を叶えるための計画を立て、それを実際に一つずつクリアして、本当に人気のコメディアンになってしまったというのはすごい。

 

 ただこの本は、彼のコメディアンとしての半生にスポットを当てているわけではないのが面白いところだ。成功者が面白おかしく語りがちな苦労話、彼が大学を出てから売れるまでの下積み時代についてはほとんど語られていない。そのかわりに本書で中心的に語られているのは、彼がいかに生きづらい半生を送っていたかという事だ。彼を生きづらくさせていたもの、それは「男らしさ」という呪縛だ。

 

 

 男らしさを誇示して家族に暴力をふるっていた父親を軽蔑し、絶対に父親のようにはならないと誓っていたのに、いつも気づくとその「男らしさ」の囚われている。ただ傍から見ると、自らの性自認に悩んだりしているわけでもない彼は、どこにでもいるような普通の男子で、「男らしさ」を気にしなければいけないような人生を送っていたようには思えないのだが、周囲の目に人一倍敏感で、また自分自身のこともよく理解していたために、事あるごとに世間のステレオタイプに敏感に反応し、落ち着かないものを感じていたのだろう。そしてそれについてよく考えるようになった。

 

感情が詳らかに語られない代わりに、それは怒りとして表に出される。怒ることだけは許されているからだ。それは男の子らしい、男らしいこととされる。

p55

 

 男は涙を見せるな、弱音を吐くな、と感情を押し殺すことを求められているから、唯一男らしいこととして許されている「怒り」を多用するのかもしれない、という著者の指摘は、なるほどそうかもと思わせられた。たいてい嫌な感じのおじさんというのは不機嫌で怒りっぽいというイメージがあるが、そこに至るまでの様々な感情を表現して他者に伝えることが出来ず、抑え込んでしまっているからなのかもしれない。

 

 そんな呪縛と戦いながらも、コメディアンとして成功し、今では家族を持つ主人公が考える世間の「男らしさ」「女らしさ」に対峙するための方法には深く頷かされる。「つらいのは女だけじゃない、男もつらいのだから我慢しろ」というのは昨今よく聞く言説だが、そうではなく、男も女もつらいことがなくなるようにしていこうと訴える姿には共感を覚えた。皆で傷口を見せあって誰が酷いか言い争うのではなく、全員の傷が癒えるように皆で治療していく必要がある。

 

 それからコメディアンと言えばポリティカル・コレクトネスで目を付けられがちだが、著者はそれに対してちゃんと自分で考え、どうするべきかを判断していることに好感が持てる。日本のように「ダメだと言われたので止めます」と思考停止して、さらには批判を恐れて無闇に自主規制してしまうと、何が駄目なのか誰も深く理解することがないまま、共通認識も築けずにただただ表現の幅がどんどんと狭くなっていってしまう。いつの間にか面白いことが何も言えなくなってしまう可能性だってある。

 

 数少ないコメディアンとしてのエピソードとしては、スター・ウォーズのレイア姫役、キャリー・フィッシャーと会った時の話が素敵で洒落ていた。ファンならきっと夢のような話だ。

 

著者

ロバート・ウェッブ

 

 

 

登場する作品

王様と私 (製作60周年記念版) [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

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ウォーターランド (新潮クレスト・ブックス)

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Forty Years On (The Gandys Miniatures Book 7) (English Edition)

「40年後(Forty Years On)」

高慢と偏見(上) (光文社古典新訳文庫)

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「ジェンダーに対する誤解(Delusions of Gender: The Real Science Behind Sex Differences (English Edition))」

女の子脳 男の子脳 神経科学から見る子どもの育て方

「見えない式服(Unseen Academicals (Discworld Novels)

「J.アルフレッド・プルフロックの恋歌(Love Song of J. Alfred Prufrock: And Other Poems)」

ライオンと魔女―ナルニア国ものがたり〈1〉 (岩波少年文庫)

ジャングル・ブック (岩波少年文庫)

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チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)

エーミールと探偵たち (岩波少年文庫 18)

「IF」 ラドヤード・キップリング

「ドクター・フーとニモンの角(Doctor Who and the Horns of Nimon)」

よしきた、ジーヴス (ウッドハウス・コレクション)

キャノンボール (字幕版)

ファイナル・オプション(字幕版)

ビバリーヒルズ・コップ (字幕版)

ラッキー・ジム (1958年)

ヤング・アインシュタイン(字幕版)

ミドルマーチ1 (光文社古典新訳文庫)

「漂流者 2人だけの島」

青い珊瑚礁 Ce (字幕版)

「ティンタン・アビー」 ワーズワース

「ガウェイン卿と緑の騎士(Sir Gawain and the Green Knight)」

トロイラスとクレシダ―シェイクスピア全集〈23〉 (ちくま文庫)

古英語叙事詩『ベーオウルフ』――クレーバー第4版対訳

テルマ&ルイーズ (字幕版)

「十字架の夢(The Dream of the Road)」

オズの魔法使い (角川文庫)

美について

「ウィッティントンと猫」

ウィズネイルと僕(字幕版)

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ベスト・キッド (字幕版)

ミッション:インポッシブル (字幕版)

ニーベルングの指環1 序夜・ラインの黄金

ロミオとジュリエット (新潮文庫)

シェイクスピア全集24 ヘンリー四世 全二部

白鯨 上 (岩波文庫)

ベッドルーム・ファース―アラン・エイクボーン戯曲集 (英米秀作戯曲シリーズ 3)

プリンセス・ブライド・ストーリー

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守銭奴 (岩波文庫 赤 512-7)

ベスト・パートナーになるために―――男と女が知っておくべき「分かち愛」のルール 男は火星から、女は金星からやってきた

新装版 話を聞かない男、地図が読めない女

「なぜ女は話し、男は歩くのか~議論をせずに関係を改善する方法(Why Women Talk and Men Walk: How to Improve Your Relationship Without Discussing It (English Edition))」

シャーロットのおくりもの

「私はあなたの心とともにある(I Carry Your Heart with Me)」

リービング・ラスベガス (字幕版)

「ゾグ(Zog)」

ことばは男が支配する―言語と性差

ジェーン・エア(上)(新潮文庫)

 

 

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