BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ウルフ・オブ・ウォールストリート」 2013

ウルフ・オブ・ウォールストリート (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 投資会社を始めて大金を稼ぐようになった男は、社員らと共に連日のように乱痴気騒ぎをくり返す日々を送っていた。

www.youtube.com

 

感想

 若くして起業で成功し、酒と女とドラッグに溺れる主人公の姿が描かれる。この乱痴気騒ぎぶりが度を越していてシンプルに面白い。仕事中のオフィスだろうが構うことなく、他の社員も巻き込んでの躁状態で無茶苦茶やっている。自制心がまったくなくてやりたい放題だ。こんな世界があるのかと、リアリティ番組を見ているような感覚で下世話な好奇心を満たしてくれる。

 

 しかし、こんなふざけた仕事ぶりでも大金を稼げるなんて金融業界はどうかしてると思ってしまうわけだが、当然彼らは不正に手を染めている。だがそれに対する世間の批判や被害者の声といった外部からの視点は敢えて省かれていて、内側から見た彼らの様子だけが延々と描かれていく。おかげで変に後ろめたさや義憤を感じることなく、尋常でない集団が内輪でエスカレートしていく奇態を楽しむことが出来る。危険なトラブルでさえもつい笑ってしまうようなコミカルさがあった。

 

 

 そんな中で印象的だったのは、主人公のスピーチに熱狂的にリアクションする大勢の社員たちの姿だ。大金を稼ぎたいとモチベーションが高いからなのだろうが、とにかく主人公の言われたとおりにやればいいと考えているような盲信ぶりも感じられる。そのためには倫理観やプライドすらも捨てても構わないと思っていそうな気味悪さがあった。

 

 これは特に高いノルマを要求するような怪しげな宗教やブラック企業、それにマルチ商法などの場で見られがちな光景だ。逆に言えば、ハイテンションで自分を無にしておかないとやってられない集団なのだろう。たしか昔見た末期のライブドアの忘年会だかもこんな感じだったような記憶がある。もしかしたらバブル期の日本人も似た感じだったのだろうか。

 

 それからあえて仕事中にクレイジーに振る舞うことで、自分を無理やりハイテンションの状態だと思い込もうとしていた部分もあるはずだ。皆でやることで共犯の仲間意識も生まれるので、団結力を高める効果もある。集団がまとまっていれば士気も上がりやすい。だからヤバい集団は共通の特徴を持っているのだろう。

 

 しかし狂乱の日々もいつか終わりがやって来る。主人公のターニングポイントは会社を去る決断を撤回してしまった時だろう。人はどんな危機的状況でも希望的観測を持ってしまうものだ。確実に危険だと言われても、その危険が訪れるまではもしかしたら自分だけは大丈夫なのではないか、切り抜けられるのではないかと思ってしまう。特に主人公は実際に何度も切り抜けてきた経験があるわけで、口も上手いので自分ですら簡単に丸め込めてしまうからなおさらだろう。

 

 終盤は栄光の後の挫折が描かれ、寂しい雰囲気が漂い始める。主人公のやりたい放題ぶりも鳴りを潜め、反省する素振りも見られるようになると、それを面白がって見ていた自分にも、ここでようやく被害者たちのことを想像する時間が生まれた。また、彼の不正を長い間見逃がし続けた金融界の問題点にも思いが至るようになる。それまで敢えて描かれてこなかっただけに、それを考えさせるのには効果的な演出だった。

 

 そしてここでしっかりと主人公の負の側面にも考えが及ぶかどうかは試金石になるだろう。そこに目が行かないと、ラストで描かれた人々のように、それでも彼に憧れてつい講演会に行ってしまったりする。想像力は大事だ。似たような話は日本にも世界にもたくさん転がっている。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作 マーティン・スコセッシ

 

原作 ウルフ・オブ・ウォールストリート 上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

製作総指揮 アーウィン・ウィンクラー/ジョージア・カカンデス/アレクサンドラ・ミルチャン

 

製作/出演 レオナルド・ディカプリオ

 

出演 ジョナ・ヒル/ジャン・デュジャルダン/ジョン・バーンサル/カイル・チャンドラー/マーゴット・ロビー/ジョン・ファヴロー/マシュー・マコノヒー/クリスティーン・エバーソール/クリスティン・ミリオティ/P・J・バーン/ケネス・チョイ/スパイク・ジョーンズ/シェー・ウィガム/イーサン・サプリージョーダン・ベルフォート

bookcites.hatenadiary.com

 

音楽 ハワード・ショア

 

ウルフ・オブ・ウォールストリート - Wikipedia

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com