★★★☆☆
あらすじ
父親に子供を産まされ、嫁ぎ先では召使いのような扱いを受けた黒人女性の半生。
感想
人種問題を描く映画かと思っていたらそうではなく、女性問題を描いた物語だった。父親には酷い扱いを受け、勝手に決められた嫁ぎ先では召使いのようにこき使われる女性の物語。人種問題に関する話も少しは出てくるが、すでに奴隷制度は終わっている20世紀初頭の物語だ。
主人公はつらい境遇に抗うのではなく、ただ流れに身を任せてひどい仕打ちに耐えている。彼女に対する扱いの悪さを見ていると、奴隷制度から解放された黒人男性は、今度は自分たちが黒人女性を奴隷にしてしまったのだなと暗澹たる気持ちになる。ただ主人公の周りの女性達の中には男と対等にやり合う女性もいたので、この時代の女性たちが皆ひどい扱いを受けていたというわけではないのかもしれない。色んな生き方をする女性たちが連帯し、助け合う姿が印象的だった。何をされても従順だった主人公も、彼女たちの影響を受けて少しずつ変わっていく。
ただそうやって変わっていく前の、夫に殴られるのも当たり前のことだと思っていた主人公が、気の強い妻に頭を悩ませていた義理の息子に「殴って言うことを聞かせればいい」とアドバイスするシーンはショッキングだった。でも冷静になってよく考えてみると、案外こういう事は世の中で多く見られる事象なのかもしれない。経営陣を擁護するブラック会社の社員とか、圧政を敷く独裁者を熱狂的に支持する国民とか、肉屋を支持するブタとか。一種のストックホルム症候群みたいなものなのかもしれない。
映画全体を通して、主人公と生き別れた妹の安否が最大の関心事として描かれているが、手紙のくだりは予想できたし、それを知った時の主人公のリアクションも物足りなかったし、その後の行動ものんびりしているように思えてしまったしで、あまり心が動くことはなかった。ただ、クライマックスでの主人公を演じるウーピー・ゴールドバーグの呆けたような表情を見せる演技は良かった。その他、笑いを取ろうとしていた白人の市長夫人とのエピソードは、笑えるというよりはただムカつくだけだったし、時間の端折り方が大雑把で、その間、主人公は何をしていたの?と思ってしまうような事も多く、いまいち気分が乗っていかなかった。
そして何よりも、主人公が積極的に動くことがほとんど無く、ただ神さまを信じて祈って待ってろ、きっといいことがあるから、というようなメッセージが感じられて、あまり素直に頷くことが出来ない映画だった。
スタッフ/キャスト
監督/製作
製作 キャスリーン・ケネディ/フランク・マーシャル
出演 ウーピー・ゴールドバーグ/ダニー・グローヴァー/マーガレット・エイヴリー /オプラ・ウィンフリー/ベン・ギロリ/ダナ・アイヴィ/レイ・ドーン・チョン/ローレンス・フィッシュバーン
製作/音楽 クインシー・ジョーンズ
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