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「いぬやしき」 2018

いぬやしき

★★☆☆☆

 

あらすじ

 家庭にも会社にも居場所のない風采が上がらない中年男は、ある日、宇宙人の事故に巻き込まれて死亡するもサイボーグとして復活する。

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感想

 会社ではミスをして馬鹿にされ、家庭では妻や娘に冷たくあしらわれ、どこにも居場所のない孤独でしがない中年男が主人公だ。だが、それを強調したいがためなのか、主人公に対する家族の扱いがあまりにも酷すぎてリアリティがなかった。

 

 漫画ならありな表現なのかもしれないが、実写だとやり過ぎでキツい。こんな針のむしろみたいな場所で普通に生活できるなんて、逆にメンタルが強くてすごいじゃないかと感心してしまうレベルだ。滅多にないだろう父親からの電話に誰も出ないのは不自然だし、それに娘が「お父さんみたいにはなりたくない」とか言うだろうか。

 

 

 主人公はやがてサイボーグ化して人助けを行なうようになり、悪と戦うことになっていく。悲哀漂う情けない中年男が世界を救う、みたいなコンセプトなのだろうが、そもそも今の日本で、実情はともかく、正社員で家族がいてマイホームもある中年男が情けないだろうか?この設定自体がもはや古いかもしれない。

 

 主人公が「善」に目覚めた後、今度は同じくサイボーグとなった男子高生が「悪」となっていく様子が描かれる。ただ彼が無差別殺人を行うようになった動機がさっぱり分からなかった。その後母親が死んでしまう不幸があり、彼はより悪に向かって行くのだが、そもそものきっかけが彼自身の不可解な無差別殺人なので全く同情できなかった。

 

 それにこの佐藤健演じる敵役は、態度が冷めきっているので逆に何をやっても怖く感じないところがあった。悪には悪なりの後ろ暗い強い思いがあり、見てる側はそれを感じて恐れを抱いたり反感を覚えたりするものだが、彼は非常にさらっとしている。だからこちらもさらっとした反応しかできなかった。

 

 中盤は蛇足のような、余談のようなエピソードが続き、停滞感がすごい。いい加減に本題に戻ってくれよと思ってしまったが、あとから振り返るとこれが本題のつもりだったようだ。あまりにも大雑把で熱量が感じられなかったので、それが描きたいこと、描かなければいけないことだとは気づかなかった。それに主人公が会社に行かなくても大丈夫なのか気になっていたのに、そういうこともまったく教えてくれない。

 

 クライマックスは、主人公と敵との一騎打ちだ。だが逃げ腰の主人公が冷めきった敵に追いかけられるパターンがほとんどで、あまりボルテージは上がらない。空を飛んだりするCGは良く出来ていたが、それが爽快感にはつながっていかなかった。鬼のように冷酷だったくせに急にしおらしくなった娘とか、和やかな朝食風景とか、とってつけたようなラストも嘘くさかった。

 

 ところで主演の木梨憲武の上半身裸のシーンが多かったのは誰向けのサービスだったのだろうか。クライマックスでは佐藤健も共に半裸になっているし、エンドロールには友人役の本郷奏多の中腰で意味深な後ろ姿のカットもあったりして、同性愛の暗喩でもしているのかと疑ってしまった。

 

スタッフ/キャスト

監督 佐藤信介

 

原作 いぬやしき(1) (イブニングコミックス)

 

出演 木梨憲武/佐藤健/本郷奏多/二階堂ふみ/三吉彩花/濱田マリ/斉藤由貴/伊勢谷友介/石丸謙二郎/山本浩司/相島一之/飯尾和樹/野間口徹/渋川清彦/河井青葉

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いぬやしき

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いぬやしき - Wikipedia

 

 

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