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「ジョジョ・ラビット」 2019

ジョジョ・ラビット (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 ヒトラーに心酔する10歳の少年は、母親が自宅でユダヤ人少女を匿っていることに気づく。

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 アカデミー賞脚色賞。108分。

 

感想

 軍国少年がユダヤ人少女との交流を通して成長していく物語だ。しかし両親が反ナチスの抵抗運動をしているのに、その息子がバリバリのヒトラー信奉者なのはなかなか興味深い。子供は体制にあっさりと騙され、取り込まれてしまうということなのだろう。

 

 両親も自分たちの活動を主人公には内緒にしていた。子供が無邪気に喋って危険にさらされることを恐れていたのだろうが、もしかしたら子供がナチスに感化され熱狂することは、世間の疑惑の目をそらすのにむしろ好都合と考えていたのかもしれない。しかしいつか真実が明らかになった時、どうするつもりだったのかは気になる。衝突は免れなかったはずだ。

 

 

 自宅の隠し部屋にユダヤ人少女が隠れているのを発見し、主人公は母親の反ナチスの活動を知る。だが密告すれば、ユダヤ人だけでなく匿っていた母親も処刑され、その家族である自分も処刑されてしまうことから、主人公は母親には気付かぬふりをしながら、少女への接触を続けるようになる。

 

 最初はユダヤ人に対する偏見と憎悪に満ちた態度を取っていた主人公だったが、次第にその態度は変わっていく。当たり前の話だが、ユダヤ人少女は噂に聞いていた角も生えておらず、どこにでもいる普通の少女だった。いかに世間が無知で、その言うことがいい加減で信用ならないか、そして自分の目で確かめることがいかに重要かを教えてくれる。

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 やがて少女に恋をした主人公はナチスに懐疑的になっていく。自分にとって大切なものが出来ると愛国心みたいな最大公約数的なものはどうでもよくなっていくものだ。逆に言えば、愛国心をことさら強調したくなるようではまだ自分にとって大事なものがなく、人間として成熟していない状態ということなのだろう。

 

 この少女との交流や、主人公や世間のナチスへの熱狂ぶりがコミカルに描かれていく。だがそれほど面白さは伝わって来ず、むしろ生ぬるさに不満を感じてしまった。とてつもなくシリアスな話を扱っているのだから、もっと鋭い笑いでないとアンバランスだ。何故ほんわかとした雰囲気でやっているのかと落ち着かない気分になる。

 

 また主人公を子供扱いし過ぎなのも気になった。10歳ともなれば、愛国心を誇示するために少女や母親を密告し、英雄的気分を味わおうとしてもおかしくはないのに妙に純真だ。終盤の彼の幼稚で残酷な嘘をラストシーンだけできれいに処理してしまった演出は上手かったが、これもよく考えると生易し過ぎる。本来なら少女はブチ切れてもいいシチュエーションだった。

 

 映画全体をファンタジーでふんわりと包み込み、色々と誤魔化しているような気がしてしまう映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作/出演 タイカ・ワイティティ

 

原作    「Caging Skies」 クリスティン・ルーネンズ

 

出演 ローマン・グリフィン・デイヴィス/トーマシン・マッケンジー/レベル・ウィルソン/スティーブン・マーチャント/アルフィー・アレン/サム・ロックウェル/スカーレット・ヨハンソン/アーチー・イェーツ

 

音楽 マイケル・ジアッチーノ

 

タイカ・ワイティティ - Wikipedia

 

 

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