★★★★☆
あらすじ
祖母の家に疎開することになった双子の兄弟。
感想
とりあえず翻訳ものなのに、不自然な言葉遣いなどがなく読みやすい。子供が書いたノートという体裁をとっているからだろうか。
戦争から逃れるために母親と離れ、祖母の元で暮らすことになった幼い子供たち。普通なら母親を恋しがって泣いたり、意地の悪い祖母からの仕打ちに悲しんだりしそうなものだが、この二人は違う。現実を受け入れる。そしてこの現実でやるべきことをやる。
この二人を悪童と読んでいいのかはよく分からない。確かに彼らを手なずけたい人間にとっては言う事を聞かない悪童かもしれないが、彼ら自身は決して自分勝手なわけではないし、誰かのために何かをすることもできる。ただ自分たちのやるべきことをやっているだけだ。
子供として見ているから、子供のくせに、ということになるが、誰にも頼る必要のない自立した人間として見れば、そんなにおかしな話ではない。世間から白い目で見られながらも、戦争の中一人で生き抜いている祖母とうまく関係を築いていることからもそれは分かる。
父親や母親にすら頼る必要のない二人の両親に対する接し方は、それでもちょっとひどい気はするが。彼らの存在を頼りにしようとする両親すら必要はない、ということなのだろう。
主人公の二人は、双子なのにあまり双子という感じがしない。二人で一人みたいだ。ラストのためだけに双子だったのだろうか。互いに互いを見ることで自分を客観視することになっていたということなのだろうか。
著者
アゴタ・クリストフ
訳 堀茂樹
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