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「ベイビー・ブローカー」 2022

ベイビー・ブローカー(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 赤ちゃんポストに捨てられた赤ん坊を横流しして金を稼ぐ男二人は、その母親に気付かれてしまい、共に引き取り手を探すことになる。韓国映画。

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感想

 赤ちゃんポストに捨てられた子供を横取りして売りさばく二人組の男と、それに気づいた母親の不思議な旅が描かれる。母親が自分の子供を買う相手を一緒に探すなんてどういう気持ちなのだ?と思ってしまったが、その裏にはやむを得ない事情があったことがのちに分かってくる。

 

 新聞記事になってしまえば、母親は何も考えずに子供を産んでさっさと捨ててしまった酷い母親だし、横流しする主人公らも赤ちゃんポストの子供を食い物にするとんでもない悪党に見えてしまうのだろう。だが、どんな事件にも表面的な事実だけでは分からない事情があり、その裏には様々なドラマがある。それを想像する力があるかどうかで世の中の見え方は変わってくるはずだ。

 

 彼らをそういった三面記事的なイメージでしか見られなかったのが、彼らを追う女刑事だった。彼女は、子を棄てた母親のことも身勝手な女だと嫌悪している。女同士でも分断があるから大変だ。ただそれだけでなく、なぜ子を棄てた時に非難されるのは母親だけで父親はスルーなのか?とか、男の子と女の子で値段が違うのはムカつくとか、女性共通の怒りもちゃんと描かれている。

 

 子供を売るためのちょっとした遠出のつもりが、買い手探しが難航して長期化したことで、いつの間にか彼らの間に絆が生まれ、まるで家族旅行みたいになっていくのが面白い。バレないように道中で時々、家族のフリをしていたのも大きいだろう。演じているうちに本当になってくることはよくある。

 

 

 主人公の相棒である若者は、子供の母親に対して最初は冷淡だった。元捨て子の彼は、自分を棄てた母親と彼女を重ねてしまっていたからだ。こういう江戸の仇を長崎で討つ的なことはよくあり、ネットの炎上騒ぎなんかもほとんどこれのような気がする。皆がどこかで誰かに受けたイヤな仕打ちの恨みを、似たようなことをした有名人を身代わりにしてここぞとばかりに晴らそうとする。

 

 冷静に考えるとお門違いもいい所でまったくひどい話だが、この映画には逆パターンも描かれている。どこかで誰かに受けた心の傷が、まったく関係のない誰かによって癒され、許されたような気になるパターンだ。関係のない人間同士で傷つけあったり許しあったりしているなんて不思議な気分になるが、そうやって世界はまわっているのかもしれない。そうであるなら、傷つけあうよりも許しあうことの方が多い社会がいい。

 

 主人公ら一行も、それを追う刑事も、旅を通してものの見方が変わっていく。終盤の観覧車でのシーンは感動的だった。ベタなシチュエーションではあるのだが、地上から離れた場所では普段言えないことでも素直に言えてしまうということだろう。

 

 すべてに片が付き、再び皆が集まろうするところでエンディングを迎える。そこに集うメンバーは、全然知らない人から見ればどういう集まり?と思ってしまうような顔ぶれかもしれない。だが、家族の形なんてなんだっていいじゃないか、こだわる必要なんて何もない、と思えてくる映画だった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/編集

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出演 ソン・ガンホ/カン・ドンウォン/ペ・ドゥナ/イ・ジウン/イ・ジュヨン/リュ・ギョンス/イ・ドンフィ/キム・ソニョン

 

ベイビー・ブローカー - Wikipedia

 

 

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