感想
遠くから見ていたい人、というのがいる。近くで関わってしまうと面倒なことに巻き込まれそうで、だけどそいつが次に何をやらかすかは興味がある。だから遠くで、少し離れて観察していたい、そんな人間。
この本の中では、主人公がそんな人間に自ら巻き込まれて、アメリカを何度も横断する。
日本人的な感覚なのかもしれないが、「旅」という言葉からイメージするのは、自由ではあるが孤独や寂しさというものが付きまとう、どこか修行のような「道」。だけど、彼らの旅は酒やドラッグ、パーティなど、どこか刹那的で享楽的。それはもともと狩猟民族だからなのか、開拓者精神に富んだ国民性だからなのか、楽観的な雰囲気で満ちている。
ただ、共通することは目的地に到着することではなく、移動することに価値を見出している点。通ったことのない道を走り、見たことのない景色を見ること。その目的地にたどり着くまでのすべての景色を見ること。路上こそ旅だとそんな思いが伝わってくる。
ジャック・ケルアックの書きたいところは書きたいだけ書く、という即興的な文章で、この手の本を読むとありがちな反応だが、なんだか旅に出たくなる。
著者
ジャック・ケルアック
訳者 青山南
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