★★★★☆
あらすじ
異常で猟奇的な殺人事件が発生し、捜査を進めていた警部は、犯人が犯罪小説を模倣していることに気付く。
カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ三部作の第1作目。原題は「Travail soigné」、英題は「Irène」。フランス文学。
感想
主人公の警部が、猟奇殺人の捜査を進めていく。単純な捜査だけでなく、マスコミ対応に頭を悩ませたり、検事や上司に気を使い、部下に目を配る様子までもが丁寧に描かれている。これに妊娠中の妻と過ごす私生活の場面もあるので、主人公の人間味がとても感じられる物語になっている。
事件はある犯罪小説を模倣していたことが判明し、さらに過去にも別の犯罪小説を真似た同じ犯人によるものとみられる陰惨な事件が起きていたことも分かってくる。それらを調べるためにたくさんの小説の名が挙げられるのだが、面白い犯罪小説が読みたければここに挙がった小説を読んでおけばいいのでは?と思ってしまうようなラインナップで、思わずこれから読みたい本のリストに色々と追加してしまった。
連続殺人事件はどれも残虐なもので、これに本のタイトル「悲しみのイレーヌ」のイレーヌが主人公の奥さんの名前であることが分かると、もう嫌な予感しかしなかった。そしてその予感通りの展開になってしまう。ちなみに原題は直訳すると「丁寧な仕事」、英題は「イレーヌ」なので、ネタバレしているのは邦題だけのようだ。
鬱な気分になりながら読んでいたのだが、ここで小説に大きな仕掛けが施されていることが分かり、とても驚かされた。
こいつの正体は”トランプの城”だなとカミーユは思った。つまりちょっとしたことでぐらつくタイプだ。体格はいいが、借りてきた体に住みついたような危うさがある。
p36
それまで、特に序盤は、主人公や関係者の姿が生き生きと描かれ、面白い表現も多いなと思いながら読んでいたのだが、だからだったのかと妙に感心してしまった。主人公の奥さんのことばかりに気を取られて全然気づかなかった。そして、それまでを改めて振り返り、その後との違いを微調整する必要があった。このポイントから突然、全然知らないキャラが当然のようにいたりするので、しばらくは「これは誰?」と戸惑ったりする。
グイグイと読ませる展開で、ハッピーエンドではなかったのに、読後の満足感はかなり高い。素直に面白かったと思える小説だった。
著者
ピエール・ルメートル
登場する作品
笑う男(上): 笑うことしかできな表情にさせられた男の生涯 (19世紀堂書店)
死者の都会(まち) (1979年) (海外ベストセラー・シリーズ)
「オルシヴァルの犯罪(河畔の悲劇)(Le crime d'Orcival (French Edition))」
リトル・シーザー (SHOGAKUKAN MYSTERYクラシック・クライム・コレクション)
関連する作品
次作 カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ三部作の第2作目
