★★★☆☆
尼崎の鍵の壊れたアパートで腐りかけの臓物に黙々と串をさす男。
何も望まずただ生きる。何かを手に入れられそうになると何故だか分からないが拒否したくなってしまう。そんな気持ちがなんとなく分かる。ある意味潔癖なのかもしれない。もしくはそれがひねくれた形で表れているのかも。だけど、結局普通の人々はどっちつかずでその中間を彷徨っている。結局この主人公も徹底できなかった。
主人公の周りの人物たちが胡散臭さをまとった人たちばかりで人間臭さが滲み出ている。そして彼らなりに必死に生きているということがとても伝わってくる。そんな中でまるで仙人のような世捨て人の主人公が関わりを持つことによって変化が起きていく過程が描かれる。
最後に女がそれでも博多に行く、その気持ちもなんとなく分かる。
著者 車谷長吉
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映画化作品