★★★★☆
あらすじ
知り合いに誘われて個展に出かけた女は、そこで出会った画家と恋に落ちる。
感想
恋に落ちるとその他の事は何にも出来なくなってしまう不器用な主人公。仕事はサボるし、外に出かけることもしない。普通の人はそれでもなんとか自分と世の中との折り合いをつけて社会生活を送ろうとするのに、彼女はそれに没頭してしまう。それはもうそうする事しか出来なくなってしまっているわけで、意図的ではないのだろう。世間はきっと駄目な女だと烙印を押すのだろうが、後先考えずにそんなことを出来る彼女がうらやましくもある。
友人が殴った女を病院に連れて行き、その女に自分の思いを語る場面にも彼女の不器用さがよく表れている。彼女の喋り方、その言葉遣い。まるで頑固な子供のようだ。世間の大人たちが愛想笑いや苦笑いでやり過ごして来た場面できっと彼女は同じように出来なかったのだろう。大人になりきれていない。だけど、きっとそれでいい。
最後の彼女なりの失恋の決着のつけ方も、子供じみているがなぜか共感できてしまう。
著者