★★★☆☆
感想
ちょっと表紙に引いてしまうが、日記の体で書かれた小説。日記という形をとっているため、いつもの町田節とはちょっと違っている。いつもよりは随分シンプル。
その中で、組んだバンドについても記述されているのだが、それを読んでいるとバンド運営というのは大変なのだな、ということがよく分かる。メンバー間のそれぞれの思惑のズレや、垣間見える人間性、それらをうまく消化して前進しなければならない。そう考えると長年やっているバンドというのはもうそれだけで偉大だ。
なぜ山座がそんな態度をとるかというと、彼は、僕が彼を愛していると信じているからだ。ああ気色が悪い。しかし彼はそう信じていて、彼をとりまくすべての世間が彼を愛し、彼の仕事が円滑に進むように陰に日に彼を応援していると思い込んでいるからである。
p99
これはバンドの話とは別で書かれていたことだが、こういう人は時々いる。さらに腹が立つのが、それに困惑しているこちらを尻目に、本人は至って幸せそうなこと。結局、他人からの評価を気にすることよりも、自分を信じることのほうが幸せになれるということなのだろう。
著者