★★★☆☆
あらすじ
雪山の小屋に籠もり、大企業に爆弾を送り付ける青年。
感想
ほぼ独白と亡霊との対話で物語は進行する。世の中に不満を覚え、人里離れた山小屋で自給自足の孤独な生活を営んでいる主人公。完全なる世捨て人のように思えるが、でもやっぱり窪塚洋介演じる男が言ったように、まだ世界に期待しているし、ただ臆病でいじけているだけに見える。
爆弾を送りつけることで、社会とのつながりを保っているのがその証拠。本当の世捨て人なら、相手が干渉してこない限り、こちらから関わろうとはしないはず。しかし彼は自分の居心地のよい社会を実現させて、社会に戻れることを願っている。そのためにも、自分の存在をアピールし続ける。
人里離れた場所にいながら、世の中を気にして文句ばっかり言っているのはまさにいじけているだけと言える。本当の「世を捨てる」ということは、究極的には社会と関わらないために自分の存在をなくすこと、自殺することなのかもしれない。
死んでいった兄弟との対話を通して、顔にクリームを塗りたくって表情を隠し平静を装っても、それでも隠しきれない家族を失った悲しみがあることを知る。自分を誤魔化し繕って、山奥に籠もって生きることを止めて、町に出た主人公の最後の慟哭。無音ではあったが、本来の場所で本来の自分にようやく戻れたという心の叫びを聞くようだった。
雪山の静けさが際立つ暮らしぶりや、最後に朗読される宮沢賢治の詩など、印象に残るシーンが多い映画だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 豊田利晃
出演 瑛太/窪塚洋介/KenKen/草刈麻有/ピュ〜ぴる/松田美由紀