★★★★☆
あらすじ
偉大なジャズドラマーを目指す音楽学校に通う青年は、名高い指揮者のバンドに加わることになる。
感想
威圧的な態度をとるJ・K・シモンズの存在感が圧倒的だ。この風貌でこの態度を取られたら、ただもう従うしかない。そしてただの変人かと思いきや、幼い少女には優しく話しかけたりして普段はまともだ。指導の方針として何らかの矜持を持って、このような態度を取っていることがわかる。だが、こんな極端な指導方針を持ってしまうのだから、どこかおかしいのは間違いないわけだが。
そんな彼に打ちのめされてしまう純朴な青年、という構図になるのかと思っていたのだが、この青年もヤバい奴だった。自分は偉大なミュージシャンになるからと他人を見下すような発言をしたり、独りよがりな理論で突然彼女を振ったりする。口だけでなくちゃんとそのために文字通り血の滲む努力をしているのはすごいが。途中で彼の執念が指揮者を凌駕してしまい、指揮者が引いてしまっていたのはちょっと面白かった。
両者のやり取りはその殆どが他のメンバーがいる場所で行われているのだが、他に誰もいないような、まるで二人だけの世界に入り込んでしまっているような、そんな印象を与える。二人が良くも悪くも共鳴してエスカレートさせている。でもこんなのを教育の場でやっちゃいけない。師弟関係なら分かるが。指揮者のようなやり方でチャーリー・パーカーが生まれたのかもしれないが、それ以外の方法では偉大なミュージシャンが生まれないというわけではない。
二人が和解し、心が通じ合えたように思えてからのラスト。ここで指揮者が隠していた本性を露わにし、どうなることかとハラハラさせる。だが、なんだよ結局二人共ただの変態じゃないか、と思わせるような二人だけの世界を見せつける結末で、見てるこちらも気持ち良くなってしまった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 デミアン・チャゼル
製作総指揮 ジェイソン・ライトマン/コウパー・サミュエルソン/ゲイリー・マイケル・ウォルターズ
出演 マイルズ・テラー/J・K・シモンズ/メリッサ・ブノワ/ポール・ライザー/オースティン・ストウェル/クリス・マルケイ/スアンヌ・スポーク
編集 トム・クロス