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「ハーバード流 最後までブレない交渉術 自分を見失わず、本当の望みをかなえる」 2015

ハーバード流 最後までブレない交渉術 ―自分を見失わず、本当の望みをかなえる

★★★☆☆

 

内容

 「ハーバード流交渉術」をロジャー・フィッシャーと共に著した著者による、ブレない交渉を行うための方法。

 

感想

 交渉術のマニュアルに沿って交渉を行ってもどうも上手くいかない、win-winの関係を築こうとしているのに気がつくとwin-loseの結果に固執してしまっている等、交渉の際に起きがちな出来事に対処する方法が紹介されている。

 

人間はしょせん、リアクション・マシーン、反応する生き物にすぎない。自分を責めたり、人を非難したり、欠乏に対する不安を感じたり、拒絶されると拒絶したりするのは当然のことだ。

p16

 

 交渉が上手く行かないのは結局、相手のアクションにリアクションしてしまうからである。事前にどんなに交渉の方針を固めていたとしても、思わぬ相手の言動につい反応してしまい、良からぬ方向へ交渉をこじらせてしまう。そうならないブレない交渉を行うためには、まずは相手に条件反射しない、ブレない自分でいることが重要だ。

 

 というわけで交渉に入る前の心の持ち方が説かれる。このあたりから自己啓発的というか、宗教的にすら感じる内容が続く。「過去を受け入れる」「未来を信じる」「現在を抱きしめる」とか、「相互利益のために与える」「喜びと存在意義のために与える」「与えるためにあるものを与える」といった章の中のタイトルの並びは、何の本なのか分からなくなるほどだ。

 

 

 つまり売り言葉に買い言葉のような、相手の行動に反応してしまわない聖人君子のような人間であれ、ということである。これは言うは易し行うは難しで、言っていることはわかるが、どのように実践していくかは難しく、良く考えなければならない。

 

 与える姿勢を強化するには、まず、相手の価値を創造することが自分の願望をかなえる役に立つかどうかを見極めなければならない。自分の利益を犠牲にしてまで、与える必要はない。なにもマザー・テレサやマハトマ・ガンジーにならなくてもいい。ましてや、相手の要求に屈する必要もない。与えることは失うことではない。なによりもまず、自分を助けると同時に相手も助け、相互利益を見出す。これがウィンーウィン交渉術の本質である。

p170

 

 相手の欲しがっているものを全部与える必要はないという記述には安心するが、これを実践するとなると、どのような事をすればいいのか簡単には分からない。さまざまな検討が必要になってくる。

 

 この本で述べられていることはもはや交渉のための技術というよりも、人間性を高めるための技術である。この技術を身につけることで、人間関係で摩擦が生じることが無くなり、交渉する必要すらなくなるのかもしれない。

 

 とりあえず交渉のテクニックについて知りたい人はこの本ではなく、他の交渉術の本を読んだ方が良いだろう。ある程度交渉術の知識があって、それでもうまくいかない人が、交渉の心構えを身につけるための本となっている。

 

著者

ウィリアム・ユーリー

 

ハーバード流 最後までブレない交渉術 ―自分を見失わず、本当の望みをかなえる

ハーバード流 最後までブレない交渉術 ―自分を見失わず、本当の望みをかなえる

  • 作者: ウィリアム・ユーリー,中川治子
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2015/06/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 

登場する作品

ハーバード流交渉術 (知的生きかた文庫)

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