★★☆☆☆
あらすじ
人里離れた山に住む女と将軍の息子との恋。タイトルの読みは「らいおう」。
感想
山奥に迷い込んだ殿様を、そこに住む若い女が追い払おうとして二人は出会い、そして互いに意識しあい、やがて惹かれ合う。このあたりのいかにも少女漫画風の展開は、観ていてつらいものがあった。
しかし赤子の頃の女をさらって10年ほど育てていた男が、女に突然元の家に戻れと言うのはあまり優しさを感じない。戻ったところで実の母親の記憶はないのだから、他人と暮らすのと変わらない。それならどこに行くのか知らないが、一緒に連れて行ってやれよ、と言いたくなる。
女も素直にすぐに実家に戻るし、実家の方は突然戻られても困るだろうと思っていたのに、すんなり受け入れてしまって拍子抜けする。そもそも家族も山に天狗が出る、どうやら攫われたうちの娘らしい、とまで分かっていたのなら、なんで会いに行かないんだと腹立たしくなる。
その他にもなんで切腹を止めずに眺めているだけなんだとか、育ての親は完全に死んだと思ったのにそこから結構喋るなとか、細かい部分で色々気になって仕方がなかった。
身分の違う同士の叶わぬ恋なのだが、正直何も心に響くものがなかった。時代劇なのに時代劇らしくない雰囲気の映画で、上下関係の緩さも気になった。殿が命令しているのに部下は面倒くさいのか嫌なのか、非常に緩慢に動く。全然畏まっている気配がなく、もっと機敏に動けよとイライラした。とは言え、ほかの時代劇が畏まり過ぎているだけで実際はこんなものだったという新解釈なのかもしれない、と思わなくもない。
蒼井優も渾身の演技をしているのは分かるが、もうちょっとヴィジュアルに気を使った方が良い。人目も憚らず顔をグシャグシャにして泣き濡れている、というのは伝わるのだが、ぐちゃぐちゃ過ぎるのが逆に気になってしまって集中できなかった。あれはちゃんと撮り直しするべきだった。
桜や菜の花の自然の風景や祭りの光景、豪華絢爛な城内の様子など、唯一、映像は美しかった。
スタッフ/キャスト
監督 廣木隆一
原作 雷桜 (角川文庫)
出演
小出恵介/時任三郎/宮崎美子/和田聰宏/須藤理彩/忍成修吾/村上淳/高良健吾/柄本佑/大杉漣/ベンガル/池畑慎之介/坂東三津五郎
音楽 大橋好規
撮影 鍋島淳裕