★★☆☆☆
あらすじ
著名な父親を殺害をするも不遜な供述を繰り返し、世間を騒がせていた女子大生を取材することにした臨床心理士の女。
感想
挑発するような供述をして世間を騒がせていた被疑者の女子大生を、臨床心理士である主人公が取材し、彼女の心の闇に迫る物語だ。性的虐待を題材にしており、なかなかヘヴィーな内容となっている。
序盤は取り付く島のない被疑者に苦戦するが、その糸口をつかんだ主人公は、徐々に彼女の心の闇に迫っていく。そして次々と彼女のつらい過去が明らかになっていく中盤は、哀しみであふれる涙が止まらない、観客ではなく映画が。なぜか映画自体が泣き濡れている。
本来は、監督が冷静にどのように観客の心を動かすかを計算して演出し、観客の涙を誘わなければいけないのに、監督が先に泣いてしまっている。泣かされるつもりで来たのに、なんでお前が泣いているんだよ、と冷めてしまう。
おそらく意図としては誘い笑いと同じで、誘い泣きの演出のつもりなのだろう。ここは泣くところですよと仰々しい音楽で教えてあげている。人によっては分かりやすくてありがたいと思うのかもしれないが、自分には余計なお世話でしかなく、「うるさいわ!」としか思えなかった。
しかも、終盤に向けてどんどんとその演出は酷くなっていく。はい、ここです!みたいな感じでピアノが突然ポロンと鳴ったりして、もはや爆笑するレベルだった。おそらくこの映画はより本来の意図通りになるよう改良するよりも、コメディとして編集し直すほうが簡単かもしれない。
それからせっかく被告役の芳根京子が裁判シーンでいい演技を見せているのに、大げさな音楽をかぶせられていたのは気の毒だった。監督が役者を信じていないのだろう。もしくは観客を信用していないのか。
あと、映画ではUruの楽曲が使用されている。エンドロールで流れる主題歌は問題なかったが、劇中で使われる挿入歌は彼女の歌力が強すぎて、映像が完全に負けてしまっていた。歌が全部持っていくので、このシーンは全然物語の内容が頭に入って来なかった。
事件の真相が明らかになっていくと共に、主人公自身が抱えた心の闇の問題も描かれるのが、この映画のポイントだ。だが事件の真相は、被疑者の母親にまずしっかり話を聞いていればだいたいのことはすぐに分かったはずなので、わざわざ遠回りしただけのような気がした。
一方の主人公の心の問題も、夫に打ち明けたらひと悶着あるわけでもなく、拍子抜けするほどあっさりと解決してしまった。なんだか中途半端な二つの物語をひっつけただけの、中途半端な物語になってしまっている印象だ。
ラストも、笑顔を見せない子供からどんな風に笑顔を引き出したのかと思ったら、特段良い話でもない、ありふれた方法だったのには脱力した。それでよく映画を締めようとしたなと呆れてしまった。
スタッフ/キャスト
監督 堤幸彦
脚本 浅野妙子
出演 北川景子/中村倫也/芳根京子/板尾創路/石田法嗣/清原翔/高岡早紀/木村佳乃/窪塚洋介
音楽 Antongiulio Frulio