★★★★☆
あらすじ
アイルランド・ダブリンでソウルミュージックのバンドを結成するためにメンバーを募集するマネージャー。
感想
ヨーロッパにおけるアイルランド人を、アメリカにおける黒人と同じ立ち位置だと見立てているのが面白い。そしてそれを決して卑下しているわけでもなく、別に気にした様子もなく淡々と取り組んでいる。
物語としてはバンドの結成からライブ、そして分裂・解散と、ありきたりの物語ではあるが、合間のコメディ要素で楽しませてくれる。そして何よりも、見ごたえのあるライブシーン。もう彼らの演奏を見ているだけで充分満足できる。
とにかくボーカルが素晴らしい。普段はデリカシーがなく自惚れ屋で全然好きになれないのだが、歌い出すと思わず惹きつけられる本物のような歌唱力。歌い始めや終わりに苦しそうでつらそうな、悩ましい表情をする所もソウル歌手っぽい。こんな迫力のある声を出し、体格も良くて貫禄があるのに、この時は実はまだ16歳だったというのも驚かされる。
その他のバンドメンバーも個性的で面白かった。皆どこか垢抜けない田舎臭さのあるキャラクターなのに、ステージに立てば逆にそれがカッコ良く見えてしまうから不思議だ。
そんな中、喧嘩っぱやい2代目のドラマーは、関わりたくない感が半端なかった。イギリスやアイルランドの映画にはこういうすぐに暴力に訴える、話を聞かなさそうな武闘派のヤバいチンピラをよく見かけるような気がするのだが、この地域ではそういう種類の人間が一定数いるということなのか。恐ろしい。
バンドでも何でもそうだが、大勢が集まって一つのことを続けていくというのは簡単ではない、ということがよく分かる。大きな目標は同じでも細かいところでは意見が違ったり、途中で満足したり、慢心したり、気が変わったりする者も出てきて、常に皆の心を一つにしておくのは至難の業だ。
だけど、ちょっとしたことでバラバラになってしまうような、個性の違う人間が集まって一つのことをするからこそ、刺激的で面白いものが生まれるという部分もあるわけで、短い間であったとしてもそういう事ができたことを喜ぶべきなのかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督 アラン・パーカー
出演 ロバート・アーキンズ/アンドリュー・ストロング/マイケル・エイハーン/アンジェリナ・ボール/ブロナー・ギャラガー/コルム・ミーニイ
音楽 ウィルソン・ピケット