★★★☆☆
あらすじ
戦時中に死んだ兄と行動をともにしていた男、ブーベと付き合い始める女。
原題は「La ragazza di Bube」。106分。
感想
イタリアの戦争直後の話で、今いち当時の社会的背景がわからない部分があるのだが、ファシストは戦争終結と共に消えて無くなったわけではなく、戦後も残って、ブーベは彼らと戦っていたということか。それまでは主要な勢力だった人間たちが、突然いなくなるわけではないので当たり前の話ではある。そう考えると日本の終戦はスムーズだったということになるのかもしれない。そもそも戦争中に国内で抵抗活動なんてほぼ無かったが。
そしてこの当時の結婚はイタリアでも本人同士で決めることではなく、男が女の父親に承諾を得ることで決まる、というのもちょっと驚きだった。この時代のイタリアでもまだそんな感じだったのか。まるで夏目漱石の小説を読んでいるような気になる。まだ女性の気持ちは軽視されている。
ブーベのことが気になるものの、直接自分に気持ちを打ち明けない男にいらだちを覚え、冷たくする主人公。靴を買ってくれると聞いて素直にはしゃいでしまうのは可愛らしいが、女も結局はそういうシステムに従順だ。勝手に親だけに了解を取って結婚を決めたのはムカつくけど、それでも結婚はするつもりになっている。
その後ブーベは一時的に国をはなれることを余儀なくされ、二人は離れ離れになり、主人公の心は揺れ・・・と続いていく。本来であれば何の問題もなく結ばれていた二人が、彼らにはどうすることもできない出来事に翻弄され、関係が危うくなってしまうというのは、見ていて気の毒だ。切なくなる。
そしてきっと、違った結末を迎えていても誰も責めないだろう。だが彼女はよりドラマチックな生き方を選んだ、ということなのかもしれない。
主人公が陰鬱な顔で電車に揺られる冒頭のシーンがラストシーンにつながったり、裁判の結果を敢えて知らさなかったりと、構成が上手く、よくまとまっている映画だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ルイジ・コメンチーニ
脚本 マルチェッロ・フォンダート
出演 クラウディア・カルディナーレジョージ・チャキリス
音楽 カルロ・ルスティケッリ
登場する作品