★★★★☆
あらすじ
蟹工船での過酷な労働に疲弊する労働者たち。
感想
10年ほど前に謎の「蟹工船」ブームがあったが、映画を見ているとその理由が分かるような気がした。ここまで分かりやすくはないが、システムとしては同じ形態で働いていてシンパシーを感じる人達がたくさんいるということなのだろう。小説の世界から100年ほど経とうとしているのに、日本は何も変わっていないということか。変わっていないというか、一度は改善されたが、もとに戻ったと言ったほうが正しいか。
過酷とは言いながらも、劇中では休憩があったり、ちゃんとした食事をしていたり、皆と語らいまどろむ時間があったりして、思っていたより待遇自体は過酷じゃないな、と思ってしまったのだが、そう思うこと自体、感覚が麻痺しているのかもしれない。
ロシア船で楽しく働く人々を見て、自らの権利を獲得するためには自らの行動が必要だと悟り、皆に説く松田龍平演じる男の言葉が熱い。松田龍平の存在感がその言葉に説得力を与えている。「たとえ今回が駄目でも何度でも立ち上がる」という所が特に良い。熱しやすく冷めやすいといわれる日本人にとっていちばん大事な部分かもしれない。
「放っておけばおとなしくなる」ではなく、「放っておくと厄介だから何か対応しないと」と思わせないといけない。言われた通りに素直にやっていれば報われるはずと信じて愚直にやるだけだったから、景気の悪化とともに「蟹工船」に共感をおぼえる時代にまた戻ってしまったのかもしれない。仕方ないとかどうせ駄目だとか言ってないで、自らを守るために戦うことも必要だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 SABU
原作
出演 松田龍平/西島秀俊/高良健吾/新井浩文/柄本時生/木下隆行/木本武宏/三浦誠己/竹財輝之助/利重剛/滝藤賢一/山本浩司/手塚とおる/皆川猿時/矢島健一/中村靖日/野間口徹/谷村美月/奥貫薫/内田春菊/でんでん/大杉漣/菅田俊/森本レオ/西本英雄
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