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「ボルベール〈帰郷〉」 2006

ボルベール<帰郷> (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 姉と娘とともに故郷で両親の墓掃除をして戻ってきた女に、次々と事件が起こる。

 

感想

 主人公たちが故郷から帰ってきてからは思いのほか、サスペンス調。しかし、前振りがしっかりしていていて感心する。帰ってくるときに隣のレストランのオーナーに挨拶して関係性と位置関係を示し、夫の不穏な視線で不穏な出来事を予感させ、包丁を洗うシーンで暗示している。この後も色々と予期せぬ出来事が起こるのだが、改めて見直してみると序盤に色々とそれを示唆するセリフが飛び交っていることに気づいて、上手いなぁと思わせられる。

 

 しかし映画は最初の主人公一家に起きた事件が中心となって進むのかと思いきや、そんなことはない。そのような事件が起きて大変だというのに、伯母が死んだり、思わぬ仕事が舞い込んだり、幼馴染が重い病気にかかったりと、次々と予期せぬ出来事が舞い込んでくる。でも、人生ってそういうもの。そんな個人の事情なんてお構いなしだ。

 

 

 そんな状況の中で浮かび上がってくるのは女たちのたくましさ。日頃築き上げてきた女だけのネットワークをフル活用して、乗り切っていく。彼女たちは互いに寄りそいあうのではなく、個々がしっかりしている上で互いに助け合うから強い。

 

 この映画ではほとんど女だけしか出てこない。男たちが出てくるのは伯母の葬式のときぐらいか。この時はまるで分断されているかのように庭に男たち、2階に女たちと見事に男女で分かれていた。それとレストランのシーンくらい。

 

 女たちだけでたくましく生きている姿を見ていると、もう男は必要ないんじゃないかと思ってしまった。妊娠の問題さえなければ、女たちだけで幸せに暮らすこともできてしまうのだろう。

 

 映画はサスペンス的でもあり、驚きの展開もあり、一言でどんな映画だと説明するのは難しいのだが、そんな中で垣間見られる様々なドラマに心動かされ、深い余韻の残る映画となっている。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ペドロ・アルモドバル

 

出演 ペネロペ・クルス/カルメン・マウラ/ロラ・ドゥエニャス/ヨアナ・コボ/アントニオ・デ・ラ・トーレ

 

ボルベール<帰郷> (字幕版)
 

ボルベール〈帰郷〉 - Wikipedia

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