★★★★☆
あらすじ
父親が胡散臭く思っていた準男爵と結婚し、イギリスに渡って義姉を加えた三人で暮らし始めた女は、屋敷内でたびたび奇怪な出来事に遭遇する。119分。
感想
ニューヨークの実業家の娘で、準男爵と結婚してイギリスに渡った若い女が主人公だ。主人公の結婚相手は、社交界で胡散臭い目で見られ、彼女の父親も怪しんで身辺調査をしていたような男だ。しかもそんな父親が突然何者かに殺されてしまう。最初からきな臭い雰囲気が漂っている。
イギリスで主人公が住むことになった夫とその姉が生まれ育った大屋敷は、荘厳だが蛾があちこちに止まっているような古くてボロい建物だ。しかもそこは陰鬱な雪国で、降り積もった雪に粘土質の赤土が入り混じる。ダークな雰囲気と白と赤の不穏な色彩の中で、主人公は幽霊に出会うなど奇妙な出来事に次々と遭遇していく。
登場する幽霊は、体の一部が所どころ腐り落ちたようなヴィジュアルをしている。不気味すぎるが、土葬だからこんな風体になるのだろうか。幽霊が主人公に何かを訴えるシーンがあったが、見た目の気味悪さに気を取られ、気付かずに見過ごしてしまいそうだった。コミュニケーションを取る上で、外見がいかに大事かがよく分かる。
いわくありげな幽霊たちの存在や義理の姉の不穏な様子、そして自身の体調の異変など怪しい出来事の連続に、主人公は屋敷と一家に隠された秘密を探り始める。だがそれは、これまでの流れからだいたい予想できるような結末へとつながっていく。それでもなぜか惹きこまれるように見てしまうのは、細部にまでこだわりが感じられる作り込まれた演出が見事だからだろう。
クライマックスでさっき死んだばかりの男が幽霊となって出てくるのはさすがに早すぎ!と思ってしまったが、主人公の友人のシャーロック・ホームズばりの名探偵ぶりなどは面白く、安定感のあるストーリー展開だった。オーソドックスだが総合力で魅せるゴシックホラーだ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ギレルモ・デル・トロ
脚本 マシュー・ロビンス
出演 ミア・ワシコウスカ/ジェシカ・チャステイン/トム・ヒドルストン/チャーリー・ハナム/ジム・ビーヴァー/バーン・ゴーマン/レスリー・ホープ/ジョナサン・ハイド/ダグ・ジョーンズ/ハビエル・ボテット