BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「秒速5センチメートル」 2007

秒速5センチメートル

★★★★☆

 

あらすじ

 小学校卒業と共に、仲の良かった女の子が引越してしまった男の子。主人公の中学生、高校生、社会人時代を描いた3話で構成される。

 

感想

 中学入学と同時に離れ離れになってしまった主人公たち。東京と栃木という場所の設定がなかなか絶妙だ。一瞬、近いなと思ってしまうがそれは大人の感覚で、13歳の少年にとっては気軽には行けないが、なんとか行けなくはない場所だろう。その距離を埋めるように二人は文通を始める。

 

 やがて主人公も遠く鹿児島へ引っ越しすることになり、その前に二人は一度会うことにする。正直、そこで主人公がなんで学校終わりの放課後に栃木に向かおうと思ったのかは疑問。普通、土日に行くと思うのだが。

 

 それはともかく、そんな二人の前にトラブルが立ちはだかる。思ったようになかなか前に進めないもどかしさや焦る気持ち、それだけに募る相手への思い、ジリジリとしたものが観ているこちらにまで伝わってくる。

 

 ただこれもスマホや携帯電話がなかったからこそ。だから何年経っても忘れられない切ない思い出となる。だが、スマホがあったら直ぐに連絡が取れ、仕切り直していただろうし、何年か経って覚えているとしたら笑い話としてだろう。便利な世の中になって、こうやって誰かを想って悶々とすることもなくなった。

 

 続いて、高校生となり鹿児島の種子島で過ごす主人公の話。この回は主人公に思いを寄せる同級生の視点で語られる。関係ないが、島の高校生たちが皆、カブに乗って通学しているのが、楽しそうだった。

 

 そして大人になり、東京で働く主人公。もはや音信は途絶えているが、どこかで幼い時に心を通わせた彼女のことを忘れられずにいる。そして迎えるラストシーン。もはやこれは監督の作風なのだろうが、完全に音楽に頼り切っているのはどうなんだろうと思わないでもない。せっかく、丹念に描いてきたのに最後は山崎まさよしの曲に預けちゃうのかと、もったいないような気になってしまう。

 

 ただそれが効果的なのも確かで、その曲が終わってのエンディングは見事にオチが決まっている。ハッピーエンドじゃないところがリアル。もし電車が通り過ぎた後に、期待した光景が広がっていたとしても、果たしてそれはハッピーエンドなのかと自問してしまっていただろう。

 

 10代の頃の切なくて胸が痛くなるような出来事が描かれ、この手の話が得意ではないこちら側の問題で、どうかな?と思ってしまうんじゃないかと危惧したが、妙に一人語りをし過ぎのきらいはあるものの、普通に物語の世界に引き込まれてしまった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作総指揮 新海誠

 

出演(声) 水橋研二近藤好美尾上綾華花村怜美/水野理紗/寺崎裕香 

 

秒速5センチメートル

秒速5センチメートル

 

秒速5センチメートル - Wikipedia

秒速5センチメートル[B-ch] | アニメ | 無料動画GYAO!

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com