★★★★☆
あらすじ
ハリウッドのセレブの家に不法侵入し、ブランド品などを盗み出す10代の少女たち。実話をもとにした物語。
感想
ネットで有名人が不在であることを確かめ、自宅に不法侵入しブランド品や貴金属を盗み出していた少女たち。彼女たちが貧しい家庭出身なら少しは同情の気持ちは芽生えるかもしれないが、どちらかと言えば裕福な家庭出身なのでどうしようもない。親にレクサスを買い与えられるような子供たちだ。
標的になったのはセレブたち。派手な生活やファッションで世間をにぎわす存在。人々は彼らにあこがれ、似たような生活やファッションを目指す。世間に消費を促し、経済を回す役割を持っているともいえ、少女たちはそんなセレブ達の発するシグナルに、過剰に反応してしまった被害者ということも出来るのかもしれない。
しかし、そこらの店より品ぞろえが豊富な高級品がクローゼットに並び、そこから多少のものが消えたところで気づかないようなセレブの家はすごい。確かに誰かの虎の子の貴金属を盗むよりはリスクが低いのかもしれないし、楽しそうと思ってしまっている自分がいる。しかも、セキュリティを解除したり窓ガラスを割って侵入するのではなく、隠してある合い鍵を見つけたり鍵をかけ忘れたドアから侵入とか、豪邸に押し入るとは思えない呆気なさ。
意外とあっさりと最初の犯行が上手くいったことから、次第に大胆になり仲間も増えていったわけだが、最初にそれを始めた主犯格の女がやっぱり少し感覚が違う。そもそも物を盗むことに何の呵責も感じていない様子で、警察に感づかれても気にせず次の犯行をしようとするし、ヤバくなれば仲間に罪を押し付けて逃げようとする。どこか現実を現実とは認識できていないような感じで、心理的に問題がありそうだ。
その他の少女たちは、そんな彼女に付いて行って犯罪に加わるようになっただけで、彼女が居なければそんなことはしていなかったかもしれない。ただの無邪気で刺激的な事が好きな、どこにでもいる様な十代の若者だ。付き合う友人を選ぶことは大事という事が良く分かる。
最終的には犯行がばれ少女たちは皆捕まるわけだが、大して反省してしていない様子なのが少し怖い。正確には悪いことをしたという自覚はあるが、それ自体は悔いていないというか。考えてみれば確かに悔いたところで罪は消えないので、悔いても仕方がないという事なのだろうか。今後の事を考えていて妙に前向きというかポジティブというか。彼らの両親たちも子供たちの犯行や裁判に対して前向きでどこか変。ポジティブ過ぎるというのも病的だと感じてしまった。
捕まった後は仲間同士が口も利かないような冷ややかな態度を互いに見せていて、ただ悪事のために集っていただけで、本当の友達ではなかったのだなという事を示唆しているのだが、ここまで極端ではないにしろ、友達なんてそんなものなのかもしれないと思わないわけでもない。楽しい時を一緒に過ごすのが友達で、楽しくなくなったらもう友達でないの一緒に過ごさない。親友というやつは別にすれば、友達なんて基本その程度の認識でいい気がする。
刹那的に生きる若者たちの姿を見ているのは面白かったが、少女たちの中にただ一人いる少年は、もうちょっと何かあるはず、と思ってしまった。多感な十代の男が少女に囲まれているわけだから。同性愛的な傾向を匂わせていたのでそれで説明をしたつもりなのかもしれないが、きれいに描き過ぎのような気がした。捕まった後の少女たちのその後も一人だけじゃなく、皆の分を知りたかった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ソフィア・コッポラ
製作 ロマン・コッポラ/ユーリー・ヘンリー
製作総指揮 エミリオ・ディエス・バロッソ/ダーレーン・カーマニョ・ロケット/フランシス・フォード・コッポラ/ポール・ラッサム/フレッド・ルース/マイク・ザキン
出演者 イズラエル・ブルサール/ケイティ・チャン/タイッサ・ファーミガ/クレア・ジュリアン/ジョージア・ロック/エマ・ワトソン/レスリー・マン/ギャヴィン・ロスデイル/パリス・ヒルトン/キルスティン・ダンスト
音楽 ブライアン・レイツェル
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