★★★★☆
あらすじ
アメリカの小さな島で暮らす周囲に馴染めない少年は、文通していた同じ島に住む少女と駈落ちする。
感想
映画冒頭、少女の家の内部が家族の様子と共に映し出されていくのだが、その映像がいつものウェス・アンダーソン監督らしい可愛らしい映像で展開されて、いきなりほっこりする。その後もこんな感じの映像が続くのだが、このテイストを保ち続けるのはかなり大変そうだ。だが、彼にかかれば何の変哲もない島の風景がこんなにも可愛らしくなってしまうのだからすごい。完全に一つの世界観が出来上がっている。
映画は、ボーイスカウトでキャンプをしていた主人公が脱走し、文通していた少女と駈落ちをする物語。逃走中にたった一人でボートを漕ぎ、火を起こし、そして野宿する主人公の姿はとても頼もしい。ボーイスカウトはカッコいいなと思ってしまった。
そして落ち合った少女との会話もスマートで、頭が良すぎて一人で何でもしようとしてしまうから、彼は皆から浮いてしまうのだろうなと見当がつく。孤独な主人公と皆と上手くやれない少女が惹かれ合うことになったのは必然なのかもしれない。思ったよりも大人びた事をするので少し驚いたが、誰もいない島の入り江で二人きり、つかの間の幸福な時間を過ごすシーンは、なんだかこちらまで幸せな気分になってしまう良いシーンだった。
それからコミカルなシーンも多く、ガムを噛みながら二人の愛は本物だと訴えていたら、どうにも真剣味が感じられないから一旦ガムを噛むのを止めてもらえるか?とお願いされていたのは笑えた。欧米ではそういう事には無頓着かと思っていたので、案外彼らも同じような事を考えているのだなとなんだか安心してしまった。それと少女の両親と警察、それにボーイスカウトの隊長が言い争うシーンも面白かった。大人が人前もはばからず真剣に揉めている様子は滑稽だ。大爆笑ではなく、くすりと笑えるシーンがたくさん散りばめられている。
少年少女のひと夏の真剣な恋物語、といった感じで、見ているとノスタルジックであたたかな気持ちになれる。主人公を仲間外れにしていたボーイスカウトの仲間たちが、途中から協力に転じたのも良い話だった。ただ、はみ出し者の二人にノアの箱舟、それに雷に打たれたりと、どこか聖書ぽい出来事がいくつかあるので、可愛らしい映像でそうは感じさせないが、実はもっと深い意味が込められているような気もした。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ウェス・アンダーソン
脚本 ロマン・コッポラ
出演 ジャレッド・ギルマン/カーラ・ヘイワード/ブルース・ウィリス/エドワード・ノートン/ビル・マーレイ/フランシス・マクドーマンド/ティルダ・スウィントン/ジェイソン・シュワルツマン/ハーヴェイ・カイテル/ボブ・バラバン
音楽 アレクサンドル・デスプラ
撮影 ロバート・D・イェーマン
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