★★☆☆☆
あらすじ
謎の飛行物体の正体を探るために雪山を行く元戦争カメラマン。
感想
冒頭の主人公が戦争カメラマンに限界を感じるエピソードが陳腐過ぎる。陳腐なのはともかく演出が全然ダメで、ああこれはつまらない映画だなと察してしまった。
2時間以上ある映画なので、せめて30分くらいは騙してほしかったと思わないでもないが、ある意味で最初から面白くないですよと宣言する親切な設計だ。おかげで何も期待せず、死んだ目で見ることが出来たので失望することもない。それなら見なければいいのだが、途中でやめられない悲しい性。
東アジアのテロリストにより雪山に墜落させられた、核兵器を積んだステルス機の時限装置を解除に向かうというストーリー。あらすじを聞くと盛り上がりそうな映画のような気がするのだが、見ていても全く盛り上がらない。ただただダイジェストを見させられているような気分になる。
何故そう思うのか考えてみると、登場人物たちが右往左往しないからのような気がする。謎の飛行物体を目撃し、自衛隊がうろつき物々しい雰囲気になっているのに、何が起きたのか?と情報が錯綜することはなく、都合よく各方面から情報が集まってすぐに目星がついてしまう。普通は紆余曲折を経て何となく真相がつかめるのに、知ってた、みたいなリアクションばかり。緊迫感がない。
さらにハラハラドキドキするような演出が下手くそ。雪崩にあっても、いきなり銃撃されても、え、それだけ?みたいな薄いリアクション。もうちょっと慌てたり、死んでしまったのか?とか、殺される!みたいな演出があるでしょと。緩急もなく淡白。さらに何の効果もない音楽。
そのくせ安っぽいジャーナリズムとかヒューマニズム、トラウマや戦争とは?とか国家とは?みたいなものは放り込んでくる。ベースがしっかりしていないので、それがすべて余計なことに感じられる。
それから分かりやすい敵役がいないのも大きいのかもしれない。相手の顔が見えないので誰と戦っているのか、何と戦っているのかというのが分かりにくく、感情移入しにくいという部分もある。
最後はいろいろな可能性をすっ飛ばしての極端な結末。飛躍しすぎ。ただあの映画の真似をしたかっただけでしょと。もうエアロスミスかけちゃえばいいのに、とすら思った。
強いて褒めるところがあるとすれば雪山の映像の美しさ。それだけ。最初から期待せずに観たので、観ながら憎悪を募らせることもなく、フラットな気持ちで観終えられた。
これは面白い映画に出会うために乗り越えなければいけない強大な壁で、それを突破出来たのだと思えば、達成感もありポジティブな気持ちにもなれる。人間、気の持ちようが大事だ。
スタッフ/キャスト
監督 成島出
脚本 長谷川康夫/飯島健三郎
出演
竹内結子/玉木宏/吉田栄作/波岡一喜/濱田岳/橋爪淳/浜田晃/大森南朋/石黒賢/藤竜也
音楽 小林武史