★★★☆☆
あらすじ
恋人とうまくいかず、筆も進まない作家は、ある雪の日に交通事故を起こしてしまう。
原題は「Every Thing Will Be Fine」。118分。
感想
仕事帰りに突然飛び出してきた子供を轢いてしまった主人公。何はともあれ、不可抗力とはいえ、子供を事故死させておいてひとまずそのまま家に帰れるのがすごいな、と思ってしまった。日本だったらとりあえず警察に拘留されそうだが、実際はどうなのだろう。それにしても、その日に警察に「あなたは悪くなかった」と慰められながら家まで送ってもらえるなんて。
そしてこのとき、主人公が一瞬、事故は回避できたと勘違いして、急にこの先全てが上手く回りだすと思ってしまうシーンはなんか理解できる。最悪の出来事を防ぐことが出来た自分は運が良くて、きっとこの先も良いことが起こるはずと思ってしまう気持ちだ。人間なんて些細な出来事で簡単にものの見方が変わってしまう。
しかし、一瞬の安堵から絶望に突き落とされた主人公。当然うまくいくと思えたその後もうまくいかなくなってしまう。人生なんてそんなものだ。ただ、罪に問われなかったとはいえ、罪の意識をずっと持ち続けてちゃんと受け入れようとしたのは偉い。
被害者の母親が主人公を責めなかったのもすごい。不可抗力とはいえ、でも主人公が車で通らなければ事故は起きなかったのにと思ってしまい、普通なら責めてしまいそうだ。主人公と被害者の母親の不思議な関係が印象的だった。
映画は物語を断片的に描きながら月日が過ぎていく。具体的にこれといったものを描くというよりは、どこでも誰にでも起きそうな人生のワンシーンが描かれていくといった感じだ。良い事だろうと悪い事だろうと、身に起きた出来事を人は抱えながら生きていく。結局人は孤独だが、それでも時おり誰かと気持ちがわかり合える時があり、そんなときにふとした幸福を感じることが出来る。
スタッフ/キャスト
監督 ヴィム・ヴェンダース
出演 ジェームズ・フランコ/シャルロット・ゲンズブール/マリ=ジョゼ・クローズ/レイチェル・マクアダムス/パトリック・ボーショー/ピーター・ストーメア