★★★☆☆
あらすじ
1989年、カナダのモントリオール理工科大学で起きた銃乱射事件をモチーフにした作品。
感想
なんでもない日常に突然始まる銃乱射事件。2003年の映画「エレファント」を思い起こさせる。一瞬何が起きたかと時が止まり、それからパニックになるという描写がリアルだ。
犯人のフェミニストが嫌いという主張は、当然理不尽で理解できないが、こういう極端な思考に陥ってしまう人は、自分の満足できない状況を誰かのせいにすることで納得しようとするのだろう。このおかしな主張は簡単に間違っていると誰でも理解させられそうなものだが、それを言ってくれる人が周囲にいない孤独な人間。
1989年の話で、当時はネットもなかったので孤立し誤った思想が肥大化していったというのは理解できるのだが、今でもアメリカを中心に、同様の事件がもはや衝撃を受けない程度に頻発しているのは何故なのだろう。ネットがあっても、多様な意見に接して誤りに気付くのではなく、同様の意見ばかりを見て主張を強化してしまうからだろうか。
フェミニストを呪い女性を中心に襲う犯人だが、その被害者となる女性たちは就職活動で根強い差別に苦しんでおり、全然犯人が思い込んでいるような状況にない。女性というだけで思うようにキャリアを積めず、その上、男を追い出そうとしていると勘違いの妄想をされて殺されるなんて、いたたまれなさ過ぎる。
事件は、少しずつ視点を変え、時間を前後させて描かれるので、知らずにいたかったことが時間をおいて直視させられたりして、なかなか精神的に堪えるものがあった。全編モノクロで描かれているが、カラーだと血が強烈でセンセーショナル過ぎるのかもしれない。
最悪な一日ではあったが、当事者たちにすればそれで終わりではない。その後の人生にずっと影響を与え続ける。日本でも銃乱射事件こそないが、通り魔的な事件は起きたりしている。こういう事件はどうしたら無くなるのだろうと、しばらく考えてしまった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演 カリーヌ・ヴァナッス/セバスティアン・ユベルドー/マキシム・ゴーデット