★★★★☆
あらすじ
ある日、覆面をした男に襲われた女性。130分。
感想
主人公が男に襲われるところから物語はスタートする。男は覆面をしていたので誰か分からない。当然、誰が犯人かを捜すサスペンスになっていくのかと思いきや、そうはならない。犯人を捜しながらも、メインはそんな主人公と周囲の人間たちの様子が描かれていく。
そもそも主人公自体がなかなかのキャラクターだ。ゲーム会社の女社長で豪邸にひとりで住み、離婚して友人の旦那と不倫したり隣の家の夫に欲情したりしている。孫を持つ年齢なのに色んな意味で現役バリバリだ。
そして周りの人たちも強烈だ。父親は猟奇殺人犯、母親は整形を繰り返し若い男に熱を上げ、息子は定職に就かず嫁の尻に敷かれている。隣人夫婦は信心深く、元の旦那は売れない作家で若い女と付き合い、生まれてきた孫はどう考えても肌が黒すぎる。そんなどこか変な人たちの人間模様が描かれていく。なんとなくウディ・アレンの映画のような雰囲気があり、コメディではないのにどこかコミカルで、思わずクスッと笑ってしまうシーンもある。
しかし、男に襲われた主人公が再びその男を求めているなんて、安っぽいポルノ映画か、と批判されてしまいそうなリスキーな内容だ。なかなか勇気のいる挑戦だったはずだ。だがそれは成功し、決してステレオタイプではない複雑な主人公の姿を浮き彫りにしている。
自分のことは他の誰でもなく自分が決めるのだ、という主人公の強い気持ちが伝わってくる。そしてそんな態度のくせに、母親や息子のやる事には、世間体が悪いからやめろと口出しせずにはいられない矛盾したところも人間臭さがあって悪くない。むしろ、自分の事だけでなく自分に関係することなら何でも自分が決めたいということか。
スタッフ/キャスト
監督 ポール・バーホーベン
脚本 デヴィッド・バーク
出演 イザベル・ユペール/クリスチャン・ベルケル/アンヌ・コンシニ/ロラン・ラフィット/シャルル・ベルラン