★★★★☆
あらすじ
強盗に襲われた金持ちの美女を助けた船乗りの男は、彼女の夫に夫婦でのヨット旅の船員として雇われる。原題は「The Lady from Shanghai」。
感想
金持ち夫婦を乗せたヨットで働く船乗りの主人公が、夫の友人に奇妙な取引を持ち掛けられ、事件に巻き込まれていく。まず、なんと言っても金持ち夫婦の若い妻を演じるリタ・ヘイワースが美しい。主人公は彼女に夫がいることを知って落胆するが、それでもその魅力に抗えず船旅に同行する。その気持ちは痛いほどわかる。この映画は彼女の美貌ありきで進行すると言ってもいい。
ちなみに映画「ショーシャンクの空に」で、主人公が監房の壁に貼っていたポスターの美女がリタ・ヘイワースだ。
主人公は人殺しもしたことがあるという腕っぷしの強い男だ。だから主導権を握って悪事を働くのかと思っていたのだが、彼は利用されて巻き込まれる側だった。彼が出会った金持ちたちは皆、底意地の悪さを感じさせるような人物ばかりで、善良で潔癖では金など稼げないことを示唆しているかのようだった。美女に浮かれて初めて金に関心をもった主人公を手玉に取ることなど、彼らにとっては朝飯前だったのかもしれない。
正直なところ、あまりストーリーは要領を得ず、サスペンスとしてはモヤモヤとしてしまう。犯人は途中で計画に狂いが生じたから予定を変更したと言っていたが、別にそのまま当初の予定通り強行しても問題はなかったように思えた。
だがリタ・ヘイワースの美貌と共に、グッとくる映像の数々がそんなモヤモヤを吹き飛ばしてくれる。タコやウツボが不気味に映し出される水族館のシーンやエキゾチックなチャイナタウンの劇場シーン、美しい島の険しい崖の上で主人公と男が汗だくで対峙するシーンなど、印象に残るカットがいくつもある。
中でもラストの遊園地での一連のシーンは圧巻だった。今見ても全然新鮮で面白い。特に鏡の間のシーンのインパクトは強烈で、のちに「燃えよドラゴン」など数々の作品で引用されてきたというのも納得の名シーンだった。
物語はイマイチなのに、全体としては好感を持ってしまう不思議な映画だ。映画とは総合芸術なのだと実感する。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作/出演 オーソン・ウェルズ
原作 上海から来た女 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1799)
出演 リタ・ヘイワース/エヴェレット・スローン/グレン・アンダース/テッド・デ・コルシア
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