BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「評決のとき」 1996

評決のとき (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 自分の娘を暴行された黒人男性が加害者の白人2人を殺害する事件が起き、人種間の緊張が高まる中、彼の弁護を引き受けた白人弁護士。

www.youtube.com

 

 原題は「A Time to Kill」。149分。

 

感想

 アメリカ南部の人種問題が絡む殺人事件の裁判を描いた物語だ。娘の暴行犯に報復を行なった男の弁護をする主人公は、ただでさえ難しい裁判なのに、その上、人種差別主義者たちの嫌がらせに苦慮することになる。人種間の緊張が高まる中、裁判所の外で様々な思惑を持って蠢く人たちの様子も同時に描かれていく。登場人物たちが皆汗だくで、じりじりとした熱気の息苦しさが画面から伝わってくる。

 

 主人公の家に火を放ったり、事務所関係者の身内に暴行を加えたり、協力者の女性をさらったりと、差別主義者たちの攻撃は過激だ。ひとりは被害者の身内だったからまだ理解できるとして、その他の人たちのこの異常な情熱はどこから来るのだろうと思ってしまう。正当な裁判が行われていることさえ気に食わない様子だった。

 

 

 ただ彼らの言動を見ていると、結局は既得権益を守りたいのだろうなというのは伝わってくる。公民権運動によって人種的に優位だった地位を失い、人種が関係なくなった社会で弱者の立場になることを恐れている。日本で最近よく聞く「弱者男性」という言葉も、案外「男性」という既得権益は失いたくない思惑が表れてしまっている面もある言葉なのかもしれない。

 

 黒人男性の被告が白人男性の弁護士に助けられる形の映画だが、黒人男性が主人公を利用しようとしているのがいい。彼はリアリストで、主人公を救世主とも友人とも思っていない。そんなに世の中は甘くないことを知っている。それだけアメリカの現実が厳しいことを表わしているとも言えるだろう。多くの犠牲を払いながら、正義感で弁護をしている主人公の戸惑った顔が印象的だった。

 

 ラストは黒人男性のアドバイスが効いて、ハッピーエンドを迎える。ただ心情的には嬉しいのだが、社会秩序的に素直に喜んでいいのかと当惑する気持ちが強かった。判決理由などが明らかにされていないのは、具体的にしてしまうといろいろと辻褄が合わなくなってしまうからかもしれない。

 

 情緒に流されてしまうのは陪審員制度の問題ではあるが、杓子定規にならないように庶民感覚を反映するための制度でもあるしなと色々と考えてしまう。それに、暴行を加えた白人男性たちが無罪放免になるかもしれないと被告が考えてしまうような理不尽な現実もあった。良くも悪くもアメリカらしい結末の映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督 ジョエル・シュマッカー

 

原作 評決のとき〈上〉 (新潮文庫)

 

製作 アーノン・ミルチャン/ジョン・グリシャム/マイケル・ネイサンソン/ハント・ロウリー

 

出演 サンドラ・ブロック/マシュー・マコノヒー

bookcites.hatenadiary.com

ケヴィン・スペイシー/オリヴァー・プラット/チャールズ・S・ダットン/ブレンダ・フリッカー/ドナルド・サザーランド/キーファー・サザーランド/パトリック・マクグーハン/アシュレイ・ジャッド/クリス・クーパー/ダグ・ハッチソン/カートウッド・スミス/ジョー・セネカ/アンソニー・ヒールド

 

評決のとき (字幕版)

評決のとき (字幕版)

  • Matthew McConaughey
Amazon

評決のとき - Wikipedia

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com