★★★★☆
あらすじ
NASAで働く黒人女性たちの活躍。事実を基にした伝記映画。原題は「Hidden Figures」。
感想
時代は1960年代。女性や黒人に対する差別や偏見が色濃く残る時代に、自分たちの人生を切り開き、宇宙開発という国家的プロジェクトに貢献した黒人女性たちの姿が描かれる。なのだが、主人公らは結婚・出産し、子育てをしながら働いていて、これは今の日本の状況よりも全然いいのでは?と思ってしまった。
それから主人公が白人男性ばかりの部署で働き始めた時、皆の差別意識を象徴的に表すコーヒーサーバーに関するシーンがあるのだが、これにしてもただ俺たちのコーヒーサーバーを使うな、ではなく、お前はこっちを使えと別の専用のサーバーを用意してくれているのは、意外と優しいなと思ってしまった。差別はするが人権は認めているということなのだろうか。
そもそもNASAが彼女らを雇っているわけなので、差別し迫害する意志はそんなにないのかもしれない。でもだからといってそれで良しとはならず、ナチュラルに差別をしてしまっていることが問題なのだが。単純に迫害して締め出すのではなく、使える所は使うみたいなのは合理的というか、狡猾というか。
そうした現実の中で、主人公たちがそれを受け入れつつも甘んじることはなく、チャンスを伺ってアピールをし、自らの道を切り開こうとする姿には心を動かされる。元々彼女たちは高い能力を持っているのだが、でもそれだけではきっと駄目で、信念を持って行動できる人でなければこうはならなかっただろう。
そしてケビン・コスナー演じる責任者のように、彼女たちを認めて引きあげた人たちがいた事も忘れてはならない。だが、結果を求められる難易度の高いミッションの責任者にとっては、有能であれば性別も肌の色も気にしていられないというのが本音だろう。自らの任務に忠実であろうとすれば、自然とそうなるものなのかもしれない。
人種的に分けられた建物の間を、主人公らが小走りで行ったり来たりするシーンが何度も登場し、それが映画に一定のリズムを与えている。そして、シーンによってその走る意味合いが変化するのも面白い。状況の変化を端的に表している。
ファレル・ウィリアムズらによる音楽も良く、三人の黒人女性が奮闘する様子がテンポよく描かれていく。彼女たちのたくましさやしなやかさに感動し、こちらまで心が奮い立ってくる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 セオドア・メルフィ
製作/音楽 ファレル・ウィリアムス
出演 タラジ・P・ヘンソン/オクタヴィア・スペンサー/ジャネール・モネイ/キルスティン・ダンスト/ジム・パーソンズ/グレン・パウエル/マハーシャラ・アリ/ローダ・グリフィス/オルディス・ホッジ/オレク・クルパ/ゲイリー・ウィークス
音楽 ハンス・ジマー/ベンジャミン・ウォルフィッシュ
登場する人物
キャサリン・ゴーブル・ジョンソン/ドロシー・ヴォーン/メアリー・ジャクソン/ジョン・グレン