★★★★☆
あらすじ
ボストンで学校教師をする男は、ある女性と付き合い始めるが、自身が熱狂的なボストン・レッドソックスのファンであることが原因でその関係に亀裂が生じてしまう。
97年のイギリス映画「ぼくのプレミアライフ フィーバーピッチ」の題材をサッカーから野球に変更してリメイクした作品。原題は「Fever Pitch」。
感想
主人公は学校教師で熱狂的なレッドソックスファンの男。普段は人を食ったような独特なセンスのユーモアで楽しませる気のいい奴だ。そんな男がバリバリのキャリアウーマンと付き合い始める。最初は順調に関係を育んでいくのだが、野球シーズンが始まり試合を重ねるにつれて、次第に彼女との間に溝が生まれていく。
ただ主人公は最初にちゃんと自分が熱狂的なファンであることを打ち明けていたし、彼女も別にそんなことは気にしないよと寛容な態度を取り、最初は彼女も主人公と一緒に応援を楽しんでいた。一応は互いに了承はしていたはずなのだが、彼女にとって主人公の熱狂具合は想像を超えていた。まさか彼女だって仕事のキャリアを脅かすほどだとは思っていなかっただろう。
普段、人は気軽に他人に趣味を聞いたりするが、趣味にはピンキリがあり、中には玄人はだしのマニアックさで打ち込んでいる人もいる。趣味を聞いて軽率に相手のことを理解した気になるのは危険だ。油断してはいけない。
コミカルな調子で主人公や仲間たちの熱狂具合は描かれていくのだが、中でも球場の仲間たち皆で詳しくない彼女に対して「バンビーノの呪い」など、チームの歴史について教えるシーンは面白かった。きっと熱狂的なファンなら大爆笑するのだろうなと想像できるようなネタで、その雰囲気しか分からない自分がなんだか悔しかった。その他、主人公が心を病んだときは、まるで自傷行為を繰り返すように、ファンにとっては悪夢の伝説的な試合を繰り返し見る行為をしてしまう、という設定も笑えた。気づいた仲間たちが、いかん、これは重症だ、と慌ててビデオテープを取り上げる。
野球以外のコミカルシーンも良くて、主人公が生徒の少年に真剣に恋愛相談するのも面白かった。ファレリー兄弟が監督するコメディ映画はギャグがどぎつ過ぎる印象があったが、この映画はそんなことはなく程よいコメディ映画となっている。誰と一緒に見ても気まずい感じになることはなさそうだ。ヒロイン役のドリュー・バリモアも魅力的で、特に序盤の野球を応援する姿などは可愛らしかった。ラストもラブコメらしい結末でほっこりする。
このクライマックスでは、試合を中断させた二人を問答無用につまみ出さずに、迷惑そうな顔をしながらもほとぼりが冷めるまで待ってあげるモブキャラの警備員たちが地味にいい仕事をしている。物語の中で、こういう粋な計らいをするモブキャラが出てくるシーンに遭遇すると嬉しくなる。
レッドソックスがバンビーノの呪いから解放されたことをきっかけに作られた映画だと思っていたのだが、実際はそんなことが起きるのは想定外だったらしく、慌てて結末を変更したらしい。このエピソード自体がコメディじみているが、そんな節目の年に自分の応援するチームを題材にしたこんな素敵な映画が作られるなんて、レッドソックスファンにとってはたまらなかっただろうなと羨ましくなる。
スタッフ/キャスト
監督 ピーター・ファレリー/ボビー・ファレリー
製作/出演 ドリュー・バリモア
製作総指揮 ニック・ホーンビィ/デヴィッド・エヴァンス/マーク・S・フィッシャー
出演 ジミー・ファロン/ジョベス・ウィリアムズ/ジェイソン・スペヴァック/ ジャック・ケーラー/アイオン・スカイ/ケイディー・ストリックランド/ジェームズ・シッキング/ウィリー・ガーソン/シオバン・ファロン/ジャッキー・バロウズ/スティーヴン・キング/ジョニー・デイモン/トロット・ニクソン/ジェイソン・バリテック/ジム・ライス/デニス・エカーズリー
音楽 クレイグ・アームストロング
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