★★★☆☆
あらすじ
同じ高校の男子と付き合い始めた女子高生だったが、街ですれ違った青い髪の女性に一目惚れをしてしまう。
フランス映画。カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。179分。
感想
まず女子高生の主人公が、普通にタバコを吸ったり、ワインを飲んだりしていることにカルチャーギャップを受けてしまった。日本だと高校生がタバコや飲酒が見つかって人生を狂わすことはままあるが、フランスだと何の影響もないわけだ。なんなら堂々と煙草と酒もやる優等生だっていたのだろう。たかが法律ひとつで、人の見る目は変わってしまう。
*なお、2009年からフランスの飲酒・喫煙の年齢制限は16歳以上から18歳以上に引き上げられたようだ。
思春期真っ只中の女子高生が年上の女性に恋に落ちる物語だ。序盤は学校の授業の内容と二人の関係の進展がシンクロしていて興味深かった。まだ自分のことがよく分からない主人公が、それを確かめるために積極的に行動していく。その原動力は、十代ならではの抑え難い欲望だ。序盤は主人公が髪の毛をいじるシーンが妙に目立ったが、これは欲求不満のストレスを抱えていることを示唆していたのだろう。
この年代の抱えるこうしたストレスは、スポーツなど別の物に打ち込むことで解消することが奨励されがちだが、貪欲に自分を探求する彼女の姿を見ていたら、行動して自分が何者なのかをしっかりと確認しておくのは大事なことのような気がしてきた。これをちゃんとやっておかないから、自分のことがよく分からない不安からステレオタイプにこだわり、変なフォビアをこじらせてしまう人が出てくるのかもしれない。
この映画の特色は何と言っても激しい性描写があることだ。付き合い始めた二人の行為が何度も映し出さる。官能的で美しいのだが、長々と、しかも時々荒ぶりを見せたりするので思わず笑ってしまいそうになる瞬間があった。この他では食事するシーンも多く、人間の根源的な生について描こうとしているように感じた。
やがて月日は流れ、二人の関係は変化していく。冷静になってみると特別なことは何もなく、ありふれたラブストーリーだ。だが当事者にとってはいかにかけがえのないものか、それががよく伝わってくる物語だった。これは世界中のカップルの恋愛に当てはまることだろう。
年齢や生まれ育った環境、人生に対する態度など、様々な違いが二人を分けることになったが、主人公の強い気持ちはまだ残ったままなのが切ない。逆に言えば、様々な違いがあったのに二人は愛し合うことが出来たのだ。しかし、それだけでは同じ人生を生きていけない現実に寂しいものを感じてしまう。彼女の人生における最良の時期の最良の恋愛は終わった。もう二度とその時間が戻ることはない。彼女が髪の毛をいじることももうない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 アブデラティフ・ケシシュ
原作 ブルーは熱い色 Le bleu est une couleur chaude
出演 アデル・エグザルホプロス/レア・セドゥ