★★★☆☆
あらすじ
舞台は北イタリア。大学教授である父親の手伝いにやって来たアメリカ人の大学院生に恋をした青年。
感想
家族で本について語り合うような知的な一家。昼間は本を読んだり、ピアノを弾いたりして過ごす。自然あふれる青空の下、時にはゲストを呼んで語らいながら食事をし、夕べは音楽に耳を傾ける。なんとも文化的で豊かな生活。
ただこれだけだとつまらなさそうに思ってしまう人もいるかもしれないが、ちゃんと17歳の主人公の周りには同年代のフレンドリーで露出度の高い女友達が何人もいる。読書や編曲に飽きれば彼女らと泉で水遊びに興じることも出来る。ここまでくるともはや楽園なのでは?と思ってしまうレベル。日本の憲法の規定する「健康で文化的な生活」とはこれの事であってほしいと願ってしまうほどだ。
この主人公が暮らす楽園のような場所に、アメリカからやって来た大学院生。自信たっぷりでいかにもアメリカ人男性といった感じだ。こういうタイプの人はあまり日本では見かけないが、海外ではわりとよく見る。まわりの環境に合わせようとするのではなく、環境の方を自分の居心地の良いようにコントロールする人。いわゆる空気を読まない人とも取れるので反感を覚えることもあるが、まわりに関係なく常に居心地が良さそうに過ごしているので、心のどこかで羨ましく思ってしまう。
そんな年上の男性に恋をしてしまった主人公。まわりにはたくさん可愛い女子がいて、普通に年頃の若者らしい男女交際もしていたのになぜ?と思ってしまうが、そんな合理的に説明できないのが「恋」というものなのだろう。
二人のひと夏の恋が描かれていく。同性愛の話なので若干見るのがしんどい部分もあるのだが、普通の男女の恋よりも心理的な抵抗が両者にあるので、深みはある。前半はパンツ一枚みたいなほぼ半裸のシーンが妙に多く、果物も印象的に使われているので、それこそ本当にアダムとイブの楽園「エデンの園」をモチーフにしているのかもしれない。
そして主人公のそんなひと夏の恋を何も言わずにただ黙って見守る両親の心の広さに感動、というか感嘆してしまった。どうしたらそんな神のような優しさを手にすることができるのか。それこそ知性のなせる業なのか。恋を知り楽園を失った主人公が、降りしきる雪の中でじっと暖炉を見つめるエンディングが心に残る。少年はこうして大人になっていく。
スタッフ/キャスト
監督/製作 ルカ・グァダニーノ
脚本/製作 ジェームズ・アイヴォリー
製作/出演 ピーター・スピアーズ
出演 アーミー・ハマー/ティモシー・シャラメ/マイケル・スタールバーグ/アミラ・カサール/エステール・ガレル/ヴィクトワール・デュボワ
音楽 スフィアン・スティーヴンス
君の名前で僕を呼んで 【字幕版】 | 映画 | 無料動画GYAO!