★★★★☆
あらすじ
酒とドラッグ漬けの日々を送るカントリーロック歌手と、彼に見いだされスターとなっていく女性。1937年の映画「スタア誕生」のリメイク作品。
感想
まず最初に登場人物たちがどんな人物かを紹介していくようなことはせず、そのまま物語がスタートする。それだけに序盤は若干駆け足気味の慌ただしさがある。そこで描かれている状況やセリフなどから各キャラクターの情報を読み取っていかなければならない。また、物語が進むにつれて明らかになってくることもある。
監督・脚本なども務めるブラッドリー・クーパーが演じるのはすでに有名となっているベテラン歌手。たまたま立ち寄ったバーで見かけた主人公のパフォーマンスに興味を持ち声をかける。最初は彼女に下心があるだけかと思っていたので、まさかその後彼女をライブのステージに上げるとは意外だった。でも彼は有名人だからと鼻にかける事もなく、誰にでも気さくで優しく、主人公の才能を認めて引き上げようともしているわけで、とてもいい奴だ。やがては妻となった主人公の成功にも嫉妬する事なく、しっかりとサポートもしている。
そして、レディー・ガガ演じる主人公も純粋で素直な女性だ。歌手としての成功を目指すのなら人を利用するしたたかさがあっても不思議はないのだが、デビューのきっかけを作ってくれるも厄介な存在になってしまった夫を見捨てる気がさらさらなかった彼女のまっすぐな愛には泣けた。なんなら彼女は自分の成功よりも夫のことを心配している。考えてみれば彼女は最初から彼をスターだからと特別視することなく普通に接していたから、ビュアな気持ちで彼に恋に落ちていたという事なのだろう。
そんないい奴同士の二人なのに、最後に悲劇が訪れてしまったのはやはり二人が音楽業界という特殊な世界の住人だったからといえる。彼女へのアドバイスとして、この世界で生き残るには自分をさらけ出し続けることが大事だと言った男は、長年それを続けてきたことで疲弊しきっていた。酒とドラッグに溺れながらも、それでも何とか正気を保っていた彼だが、同じ世界で生きていこうとする愛する妻の分までは抱えきれず、遂には崩壊してしまった。恵まれない環境で育ったせいで上手く人間関係を築く方法を知らなかったことも影響しているのだろう。
人気上昇中の若い歌手と、若手に押されて人気が下降気味のベテラン歌手という対照的な立場にいる二人。そんな彼らが共に純粋であったがゆえに起きた悲劇とも言え、なんだかとても切ない気持ちになってしまった。もし二人が打算的に振る舞うことが出来たなら、上手く立ち回ってこんな事にはならなかったかもしれない。
テンポが良すぎる展開に最初は上手くついていけない感じがあったが、いつの間にか物語の世界に引き込まれていた。なんと言っても主人公を演じるレディー・ガガの歌唱力に圧倒される。演技もそつなくこなしており、彼女の存在が映画に説得力をもたらしていると言えるだろう。やはり世界レベルのスターともなると実力が違う。このクラスには単なるキワモノなんておらず、もしいるとしたらそれは実力があり、かつキワモノという事なのだろう。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作/出演 ブラッドリー・クーパー
原作 スタア誕生(字幕版)
製作 ビル・ガーバー/ジョン・ピーターズ/トッド・フィリップス/リネット・ハウエル・テイラー
出演 レディー・ガガ/アンドリュー・ダイス・クレイ/デイヴ・シャペル/サム・エリオット/ロン・リフキン/レベッカ・フィールド/グレッグ・グランバーグ/エディ・グリフィン/アレック・ボールドウィン/ブランディ・カーライル/ホールジー
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