★★★☆☆
あらすじ
アメリカの鱒釣りにまつわるいくつかの物語。
感想
数ページで終わるような短い話が幾つも収められている。各話はそれぞれつながっているような、つながっていないような関係性で、それぞれの物語自体も抽象的で分かりにくいものとなっている。文章が難解というわけではないのだが、読んだところで何が言いたいのかよく分からない感じだ。正直なところ、読んでいてかなり苦痛だった。
本編をなんとか読み終え、巻末の訳者のあとがきで解説なり時代背景の紹介なりを読めば一息つけるだろうと思っていたら、これもまた同じ調子で抽象的で分かりづらい話ばかりが続いたので、心が折れそうになった。ただ、文庫化の際に加えられた解説で、この訳者のあとがき自体も良かったと絶賛されているので、自分の感性が合わないか、理解が足りていないだけなのだろう。当時だからそう感じたのだと時代のせいにしたい気持ちもあるが。
壁にはトイレット・ペーパーがあったが、それはもうあんまり古くてマグナ・カルタの親戚(おそらく従弟)みたいに見えた。
p194
ただ、そんな巻末のあとがきや解説を読んでいたら、ストーリーを追うのではなく、詩のようにイメージを楽しむものなのだろうなという事は分かってきた。そういう意味では、時々面白いと思える表現はあった。
そしてアメリカの変化を描いているというのも何となく理解できる。ただそこで昔は良かっただの、今は駄目だのといった愚痴や小言は一切出てこない。そんなときはノスタルジックな感情に引っ張られて、感傷的な事を言いたくなるものだが、ただ淡々とそう変わった、と語っているだけなのは、何か著者の独特の姿勢が表れているように感じられる。
著者
リチャード・ブローティガン
登場する作品
「憂鬱の解剖(The Anatomy of Melancholy)」
「聖オルバンズの書」
「チョーク川の副次的戦術」 H・C・カットクリフ
「真実は魚釣りより奇なり」 ビアトリス・クック
「北国回想」 リチャード・フランク
「我は釣人」 W・C・プライム
「鱒釣りと毛鉤」 ジム・クィック
「魚と果実に関する実験」 ジョン・タヴァナー
「川は眠らぬ」 ロデリック・L・ヘイグ=ブラウン
「魚が我らを分つまで」 ビアトリス・クック
「毛鉤釣りと鱒の立場」 E・W・ハーディング
「チョーク川研究」 チャールズ・キングスレー
「鱒狂い」 ロバート・トレイバー
「太陽と毛鉤」 J・W・ダン
「徒然釣り」 レイ・バーグマン
「孵化期の鱒釣り」 アーネスト・G・シュバイバー二世
「急流の鱒釣りーその技術」 H・C・カットクリフ
「新装の古い毛鉤」 C・E・ウォーカー
「釣人の春」 ロデリック・L・ヘイグ=ブラウン
「真摯なる釣人と川鱒」 チャールズ・ブラッドフォード
「女性も釣れる」 チジー・ファリングトン
「釣人天国・ニュージーランド」 イン・グレイ
「毛鉤釣りの手引」 G・C・ベインブリッジ
「ネオンの荒野(The Neon Wilderness)」
「カリガリ博士(字幕版)(カリガリ博士の実験室)」
「この家に火をつけよ(Set This House on Fire (English Edition))」
「自然と人間」 マーストン・ベイツ
「人類の黄昏」 アーネスト・アルバート・フートン