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「アメリカン・スナイパー」 2014

アメリカン・スナイパー(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 イラク戦争に派遣された狙撃兵は、やがて「レジェンド」と仲間に賞賛されるほどの活躍を見せるようになる。実在の人物、クリス・カイルをモデルにした事実を基にした物語。

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感想

 戦場で類まれなる活躍を見せながらも、心を病んでいく男が主人公だ。敵は女性や子供まで使ってゲリラ的に戦っている。そんな場所で瞬時に一般人か戦闘員かを判断し、確実に敵を排除しなければならない任務は、精神的にしんどそうだ。狙撃兵は現場から離れたところにいるから気楽そうだと思っていたが、自分がミスをすれば味方が大勢死ぬことになるので、ものすごいプレッシャーがあることがよく分かった。

 

 しかし主人公が任務の最中でも何度か気軽に、本国の家族と電話で話すシーンがあって驚いた。皆といる時でもやっていたので軍規上の問題はないのだろうが、戦場の異常さを感じる。

 

 

 やがて主人公は、仲間を殺した敵の凄腕スナイパーを倒すことに執念を燃やすようになる。姿を見せることなく次々と味方を殺していく敵の存在は恐怖だが、相手からしたら主人公もまた同じ存在だ。スナイパー同士が互いに姿を見せることなく、互いを意識するようになる。

 

 二人の戦いは長期にわたり、主人公はイラクとアメリカを何度か行き来することになる。常に死と隣り合わせの戦場と、アメリカでの緊張感皆無の穏やかな日常とのギャップに戸惑い、また不条理なイラクの現実に無関心な国民に憤りを覚えるようになる。主人公は心に傷を負っていく。

 

 だが普通に考えて、極限状態から平時に戻ってすぐに適合できる方がまともじゃない。主人公がおかしくなるのは当然といえば当然だろう。それに平和な場所に戻れる主人公はまだ幸せで、イラク国民は戦場しか居場所がない。

 

 おかしくなっていく主人公を心配し、家族は戦場に戻らないように懇願する。主人公自身もこのままではヤバいと理解しているのだが、それでもまた戦場へと戻っていく。まだ仲間の仇である敵のスナイパーを倒しておらず、それに片が付くまでは辞められない。そう思う主人公の気持ちはよく分かる。中途半端なままでは終われない。悔いが残ってしまう。

 

 時間が経つのを忘れるような緊迫感あふれる戦場のシーンが続く。クライマックスの砂嵐のなかでの戦闘は、何をやっているのか正直よく分からなかったが、それでもリアルな迫力があった。ブラッドリー・クーパーがタフに戦いながらも、心が壊れていく主人公を見事に演じている。またいかにも兵士の体格を作り上げているのもすごい。

 

 映画は強いメッセージ性を感じさせない。ただフラットに一人の兵士の姿を描いている印象だ。ここから「兵隊さんカッコいい」と能天気に興奮するのも、「戦争は人間を狂わせる」と反戦気分を高めるのも観客次第だ。この映画を称賛するも批判するも、それは映画に対するものではなく、この戦争を行なう政府に対してのものとなる。またそれを言う者がどんな人物であるかを明らかにするだけだ。そういう構図に持って行く上手い演出だ。

 

 とはいえ実話を基にした物語で、あんな衝撃的な結末をあっさりと描いていること自体が、戦争の闇を十分に伝えているといえるだろう。一つ間違えれば主人公が逆の立場になっていた可能性もあるし、同じようなことがアメリカのあちこちで起きる可能性がある。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作

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原作 アメリカン・スナイパー (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

製作 ロバート・ロレンツ/ピーター・モーガン/アンドリュー・ラザール

 

製作/出演 ブラッドリー・クーパー

 

出演 シエナ・ミラー/ルーク・グライムス/カイル・ガルナー/ジェイク・マクドーマン/ マックス・チャールズ/サム・ジェーガー/ナヴィド・ネガーバン/エリック・クローズ/ブライアン・ハリセイ

 

アメリカン・スナイパー(字幕版)

アメリカン・スナイパー(字幕版)

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アメリカン・スナイパー - Wikipedia

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