★★★☆☆
あらすじ
ありふれた殺人事件をなんとか見栄えのある事件に仕立て上げようとする刑事たち。
感想
よくある殺人事件を、マスコミや世間が食いつきそうな味わいのある事件に仕立て上げようとするコメディ映画。事件を面白くしようと、刑事が犯行現場の指紋を拭き取ったり、調書を改ざんしたりする。そんな事あり得ないだろ、馬鹿なことするなよ、と笑える所のはずのなのだが、そんな馬鹿げたことが実際に起きてしまい、しかも平然と開き直られている現在、全然笑えないのが悲しい。
その他にも、仲代達矢演じる主人公は、昔のおじさんが言いそうな事、いわゆる老害発言をネタにしたようなギャグが多いのだが、これまた公式の場で近頃よく聞かれる物言いであり、そしてそれが何となく受け入れられてしまっている現況ではあまり笑えない。原作・脚本のつかこうへいが生きていたら、これらをどういう風に笑いに変えていたのだろうなと考えてしまった。
そもそもこの映画は、全体的に常に緊張感が漂っていて、なんだか笑えない空気がある。笑いの基本は「緊張と緩和」という事から考えると、緊張があるのはいい事なのだが、それが笑いに転じる時の緩和が緩和しきれていない感じだ。まだどこかにかすかな緊張感が漂っていて、無防備にはどうにも笑えない。
ただ、笑いはともかく、まるで舞台のように殺人事件を再現するシーンはなかなかグッとくるものがあった。登場人物が皆、重厚感のある迫真の演技。もしかしたらこの重厚感があだとなって、イマイチ笑えない事になっているのかもしれないが。それから、大滝秀治のとぼけた味のある演技には惹きつけられた。この人は本当にいい役者だ。
あまり中だるみなく見られる映画ではあるのだが、どこかに物足りさを感じてしまう映画。
スタッフ/キャスト
監督 高橋和男
脚本 つかこうへい
出演 仲代達矢/風間杜夫/志穂美悦子/竹田高利/高橋かおり/平泉成/三谷昇/石丸謙二郎/酒井敏也/益岡徹/隆大介/江藤潤/高橋悦史/大滝秀治
音楽 久石譲