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「ユナイテッド93」 2006

ユナイテッド93 (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロを、ハイジャックされたユナイテッド航空93便の様子を中心に描く。

www.youtube.com

 

ユナイテッド航空93便テロ事件 - Wikipedia

 

感想

 ハイジャックされたユナイテッド93の機内を中心に、航空管制室や空軍らも交えつつ、911テロ事件当日の現場の様子が描かれていく。当事者たちの誰か一人にフォーカスを当てるわけでもなく、それぞれの人物像を深く掘り下げていくわけでもなく、当日起きたことを時系列に沿って淡々と描いていくドキュメンタリータッチの映画だ。

 

 だがいつも通りに始まった一日だったのに、あり得ないことの連続で次第に緊迫感が増し、騒然としていく様子に目が離せない。情報が錯綜し混乱しながらも何かとんでもないことが起きていることだけははっきりと分かって、食い入るようにニュースを見つめていたこの日の気持ちが蘇るようだった。常に緊張感が漂う見ごたえのある映画となっている。

 

 

 メインで描かれるユナイテッド93に乗り合わせた人たちは、どんな飛行機に乗っても見かけそうな普通の人たちばかりだ。そんな人たちがある日突然、何の謂れもないのに事件に巻き込まれてしまう理不尽さに言葉を失う。敢えて無名の俳優を起用しているのが効果的で、深く掘り下げずにどこにでもいるような人々として描くことでリアリティが増している。映画みたいに窮地を救ってくれるヒーローはいない。

 

 それでも何とか窮地を脱しようと、たまたま居合わせただけの初対面の普通の乗客たちが声を掛け合い、即席で力を合わせて戦おうとする姿には胸が熱くなった。ハイジャックや立て籠もり事件の人質は、犯人の要求が通れば自分たちは無事解放されるに違いないと希望的観測を持つので目立たず従順であろうとするが、今回の場合は自爆テロの巻き添えにされて助かることはないと確信したから、一致団結して抵抗できたと言える。正しい決断をするためには情報がいかに重要かが分かる。乗客たちが地上との交信で得た情報を、必死に皆で伝えあっていたのが印象的だった。

 

 だが乗客らの必死の奮闘も実らず、最後は無慈悲な結末を迎えることになる。フィクションの物語のようにはいかない。それでもやれることをやり、一矢無報いることが出来た救いのようなものはある。あるのだがやっぱり、なんでこんな目に遭わなければいけないのだというやるせなさの方が強く残る。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 ポール・グリーングラス

 

編集 クレア・ダグラス/リチャード・ピアソン/クリストファー・ラウズ

 

出演 シャイアン・ジャクソン/クリスチャン・クレメンソン/ジョン・ロスマン/デヴィッド・ラッシュ/コーリイ・ジョンソン

 

ユナイテッド93 (字幕版)

ユナイテッド93 (字幕版)

  • デヴィッド・アラン・ブッシェ
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ユナイテッド93 - Wikipedia

 

 

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