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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ハラがコレなんで」 2011

ハラがコレなんで

★★☆☆☆

 

あらすじ

 流れで米国人男性についてアメリカに行き、妊娠して一人で戻って来た女は、幼い頃に暮らしていた時代に取り残されたような長屋で再び暮らすようになる。

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感想

 幼い頃に住んでいた長屋に戻って来た妊娠中の女が主人公だ。彼女はかつて暮らした昔ながらの粋で人情味がある下町の生活から多大な影響を受けている。他人の家にチャイムも鳴らさずズカズカと入っていったり、いきなりタッパーに入った漬物をあげようとしたりする姿は面白かった。また、自分のなけなしのお金を困っている他人に全部あげてしまうシーンは、確かに粋でカッコ良かった。

 

 序盤は、なんか変な人だなと彼女の行動を面白がれていた。だが、見ているうちに次第に苛立たしさを覚えはじめた。最初の新鮮味が薄れてくると、彼女の一本調子ぶりが目立ってくるからだ。別におかしな人でもいいのだが、彼女なりの喜怒哀楽が見えない。常にこう来たらこう返すというプログラムのもとに動いているようで、彼女に人間味が感じられず、まるでロボットを見ているような気持ちになってくる。段々と感情移入できなくなって気分が冷めてしまった。

 

 

 主人公を演じる仲里依紗も案外とコメディは向いていないのか、観客に笑える隙を与えない演技になってしまっている。とはいえ彼女の責任というよりも、やはりもともとのキャラクター造形を間違えている方が大きいだろう。

 

 それからコミカルなシーンが冗長なのも良くなかった。余韻を残して味わいを引き出そうとしていたのかもしれないが、楽しかった気持がスーと引いて真顔になってしまう変な間が出来ただけだった。

 

 最後はタイトルからして予想通りの、ドタバタの中で赤ちゃんが生まれる展開となる。だが赤ちゃんが生まれるまでは描かず、その手前で終わらせたのは好感が持てた。個人的に赤ちゃんが生まれて終わる映画は、なんかズルい感じがして嫌いだ。

 

 主人公を見ていると、「男はつらいよ」の主人公・寅さんが代表的だが、粋で人情味のある人間は、他人を幸せにはするが、意外と本人は幸せになれない方が多いのかもしれないなと思ったりした。己のスタイルを守るためなら自分の幸せまでもを犠牲にしてしまうからだろう。映画の中の他の登場人物たちも皆そんな感じだった。

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 人生には「粋」に限らず、誠実だったり、ワイルドだったり、ファッショナブルだったりと、様々なテーマのスタイルがある。それにこだわって生きるのは悪いことではないが、自分の幸せよりもそれを優先するような生き方は止めたほうがよさそうだ。何でもやり過ぎは良くない。それを分かった上で、それでもそのスタイルを貫こうとする自由ももちろんあるが。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 石井裕也

 

出演 仲里依紗/大野百花/中村蒼/石橋凌/稲川実代子/竹内都子/近藤芳正/螢雪次朗/斉藤慶子/戸次重幸/森岡龍

 

ハラがコレなんで - Wikipedia

 

 

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