★★★☆☆
あらすじ
退職時に居合わせた定年を迎えた老人、面接に来ていた若者の三人で起業した男は、会社の命運をかけた出張に出かける。
感想
会社の存続をかけた出張を行う男が主人公だ。同行する二人の社員とのやりとりや出張先での出来事、留守中に家族が起こす問題などがコミカルに描かれていく。
主人公に同行する二人の社員はどちらも風変わりな男で、おかしな三人組のビジネストリップといった趣となるわけだが、その中では定年と同時に主人公の起業に加わったトム・ウィルキンソン演じる老年の社員が良かった。社長よりもかなり年上の彼には、役割的に良き知恵を授けてくれる経験豊富なベテランらしさを期待してしまうが、まったくそんなことはなく、訥々と自らの欲望を語るような煩悩にまみれた男だった。
その見た目と内面のギャップが面白いのだが、考えてみれば老人だからといって必ずしも達観したり枯れたりしている必要はないよなと思わせてくれる。歳を取っても欲望に忠実なのも人間味があっていい。結局、年齢だの性別だのに関係なく、自分の好きなように生きられるのが一番だ。
一行は、最初の目的地・ポートランドを経て、そのまま予定になかったドイツに向かうことになる。ちょっとしたロードムービー感もあって、その非日常性が楽しい。ドイツのサウナは混浴なのかと驚いたり、アメリカ人は軍人にビジネスクラスを譲ったりするのかと感心したりと色々興味深かった。ビジネスクラスの件は慣習というよりも定番の美談のようだが。
男女混浴サウナで「整う」ドイツの不思議な「裸」感覚 : 読売新聞
エイミー・アダムスがファーストクラスの座席を軍人に譲る! | Vogue Japan
肝心のコメディーは、大爆笑というほどではないがどれもそこそこに笑えて、それなりに楽しめる。だがどのエピソードも単発で、全体としてのまとまりはない。ユースホステルで知り合った若者が取引相手の御曹司だったり、ドイツでひょんなことから有名になってしまった主人公がその知名度でもっと大きなチャンスをものにしたりするのかと思っていたのに何もなかった。
それぞれのエピソードを伏線にして、ラストに向けて盛り上げていって欲しかった。すべてやりっ放しで、その点では不満が残る映画だった。
スタッフ/キャスト
監督 ケン・スコット
出演 ヴィンス・ヴォーン/トム・ウィルキンソン/デイブ・フランコ/シエナ・ミラー/ニック・フロスト/ジェームズ・マースデン