★★★★☆
あらすじ
妻の行方が分からなくなって警察に通報した男は、やがて世間やメディアから彼女を殺したのではないかと疑われるようになる。
感想
失踪した妻を殺したのではないかと疑われてしまう男が主人公だ。妻に関する質問に答えられず無関心そうで、あまり心配しているようには見えないし、事件直後も動揺を見せずに淡々としていた彼の様子からそう思ってしまうのも無理はない。夫婦仲も冷めていたようだ。
そのうち主人公に不利な状況証拠も出てくるので、やはり彼が犯人で、偽っているのか、二重人格的なものなのではないかと予想したが、だとしたらもっと被害者らしく振る舞うはずだよなと思い直した。彼の被害者らしくない振る舞いは捜査関係者の不審を招き、過剰なマスコミの報道によって世間は彼を犯人だと思い込むようになっていく。
捜査が進展しても分からないままだった事件の真相は、中盤に明らかになる。それまで時おり挿入されていた夫婦の思い出を綴った妻の日記が、実はミスリーディングを誘うものだったことが分かる。あんなに幸せな二人だったのにと、悲劇を強調するためにやっているものだと思わせておいての上手いプロットだった。
そしていつの間にか主人公が、無実を証明する事ではなく、妻を殺すような男ではないとイメージ作りに必死になっているのが面白い。捜査当局が世間の反応に影響を受けているので世論は大事だとも言えるが、エスカレートしていくメディアの問題を示唆しているとも言える。これは刺激を求め、娯楽として消費してしまう世間の問題でもある。この騒ぎに便乗して、なぜか主人公との不適切な関係を告白する少女がメディアに登場してくるのは、いかにもアメリカらしい展開だった。
次に何が起こるのかが全く読めない展開で、最後まで気の抜けないサスペンス映画だ。後半はロザムンド・パイク演じる妻の凄みが増していって見応えがある。抵抗する姿勢を見せながらも抗いきれない主人公には闇を感じてしまった。後味悪く、いやな余韻が残るラストも良い。
そしてこれは特殊な夫婦の話だったが、実は一般的な夫婦もそんなに変わらないのではないかと思ってしまう。最初は互いに気に入られようと相手の望む異性を演じていたのに、次第にそれをやめてしまって二人の仲は冷めていく。そんな彼らの関係を支えるのは世間体で、時にそれを盾に相手を支配したりされたりする。意識的なのか無意識なのか、またその強弱にも違いはあれど、どの夫婦もこんなせめぎ合いを人知れず日々行いながら暮らしているのだなと思うとゾッとしなくもない。
スタッフ/キャスト
監督 デヴィッド・フィンチャー
脚本 ギリアン・フリン
製作 レスリー・ディクソン/ブルナ・パパンドレア/リース・ウィザースプーン/セアン・チャフィン
出演 ベン・アフレック/ロザムンド・パイク/ニール・パトリック・ハリス/タイラー・ペリー/キャリー・クーン/キム・ディケンズ/パトリック・フュジット/ケイシー・ウィルソン/ミッシー・パイル/セーラ・ウォード/エミリー・ラタコウスキー/キャスリーン・ローズ・パーキンス/デヴィッド・クレノン/スクート・マクネイリー/ボイド・ホルブルック/ローラ・カーク
音楽 トレント・レズナー/アッティカス・ロス
撮影 ジェフ・クローネンウェス